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2024.10.28
飲食店インテリアトレンド2024 ベスト5
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー/キッチンスペシャリスト猿渡 奈央
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
2020年から数年間にわたり世界的な感染症の流行に翻弄された飲食店業界ですが、2023年には外食全体売上は前年比114.1%、2019年比で107.7%とコロナ前の水準にまで回復しました。(参考:外食産業市場動向調査 令和 5 年(2023 年)年間結果報告)
訪日外国人数が回復してインバウンド需要が拡大、客単価が上昇したことが売上増の一因ではあるものの、客数そのものはまだ回復途上にあるとのこと。客足を取り込むための大きな要素となるのが、空間のインテリアです。飲食店といっても、ファストフード、カフェ、喫茶店などの軽食タイプから、一定の店舗面積を必要とするファミリーレストランやブッフェタイプのレストラン、居酒屋、レストラン、バーなど、その業態ごとに顧客の時間の過ごし方や使い方は様々で、区画や立地、ターゲット層に合わせてデザインも幅広くあります。空間デザインもファッションと同じで、時流とともに一定のトレンドはあるもの。今回は、回復基調にある飲食店のインテリアに着目し、注目のインテリアトレンド、キーワードをご紹介します。
トレンド1 エコロジカル✕サステナブルなデザイン
SDGsという言葉が一般的にも広まりつつありますが、とりわけ社会的インパクトの大きい建築や空間デザインにおいては、その概念は以前から到来していました。2015年の国連サミットでの採択以降はさらにこの考え方が浸透し、環境に配慮した素材やデザインが増加しています。
エコでサステナブルなデザインスタイルとは、環境への配慮と持続可能性を重視したインテリアアプローチです。具体的には、①太陽光発電、LED照明や省エネ機器など、電力消費を抑えるエネルギーの効率的な利用、②竹など速く成長する素材や再生木材をつかった家具など、環境負荷を最小限に抑えるライフサイクル思考、③CO2排出量を抑えるための資材と職人のローカル調達、④自然光や植物など環境との調和、が取り組みとして挙げられます。
世界的な未来志向の高まりから、ミシュランガイドでは2021年度版から新しく「グリーンスター」という称号が設けられました。(参考:ミシュラングリーンスターとは?)これは、サステナブルな食の取り組みをしている飲食店に付与されるもの。
具体的な評価基準は、フードロス削減、地産地消やコスト削減への取り組みなど。2023年12月に発表されたミシュランガイド2024では11店舗がグリーンスターに選ばれており、【自然との共存共生】をコンセプトに掲げる東京・青山のフレンチ「LATURE」、里山料理というジャンルを確立した「NARISAWA」などが星を獲得しています。選ばれるには、料理のクオリティのみならず食材や店舗運営に理念が浸透していることが肝要で、店舗インテリアはその世界観を表現するためのステージとして作用しています。また、ミシュランの流れをみてもわかるように、エコやサステナブルといった言葉は、一過性のトレンドであった時期を過ぎ、今や飲食店の理念を形作る重要な要素となっているのです。
トレンド2 ナチュラル×オーガニックデザイン
ナチュラルでオーガニックなスタイルは、①木材、石、コットンやリネン、天然繊維などの自然素材、②華美な装飾を除きシンプルながらも洗練された空間、③ベージュやブラウン、アースカラーを貴重とした落ち着いたカラーパレット、が特徴です。自然素材を基調とした温かみと調和を感じさせるスタイルで、視覚的にも感覚的にもリラックスできる空間を作り出します。
天然素材は、木材や石、コットンやリネンといった植物由来の繊維が主に使用され、これらの素材は加工を最小限に、自然な質感をそのまま生かします。特に木材はテーブルや椅子などのほか、床材や壁のパネル、天井の梁にまで使用され、ナチュラルな空間を引き立てます。滞在時間が長く、くつろぎを提供する空間であれば、リネンの間仕切りやウールのクッションカバーやカウチといった視覚的に柔らかい印象を与えるファブリックもポイント。
カラーパレットは、ベージュやブラウン、ホワイト、モスグリーンなど、自然にある色を基調とすることで全体的に落ち着いた印象を与えます。このような色合いは目に優しく、清潔な印象で穏やかな雰囲気を作り出すため、リラクゼーション効果も高く、長時間滞在するカフェやレストランに適しています。
また、植物も重要な要素。観葉植物や多肉植物は、単に視覚的な美しさを提供するだけでなく、空間に生命感を与えるとともに、空気の浄化や湿度の調整など、室内環境を向上させる役割も果たします。大きな植物をエントランスや店舗中心部、あるいはフロアをまたがる吹き抜けに配し、店のシンボルとして設えることで、店のイメージづくりや特徴付けに有効に使われます。たとえばデリ・惣菜のテイクアウトや、スムージー&ジューススタンドなど短時間の立ち寄り型店舗では、カウンターにアクセントとしてビタミンカラーや青々としたグリーンを配せば、オーガニック、健康的といったメッセージの発信になります。
いずれにせよ、ナチュラル✕オーガニックスタイルでは圧迫感を減らして空間に抜けを作るのがトレンドで、余白を多めにとることがポイント。そのようなシンプルかつ抜けのある空間の床材には、パラドー社の「Oak grey whitewashed」やヨーロッパの古木をモチーフにした「Oak Natural Mixgrey」がおすすめ。自然な木目の美しさが、抜けのある空間を単調にせずにまとめてくれることでしょう。
トレンド3 ミックスマテリアルなヴィンテージデザイン
トレンド3つめは、時間の流れで起こる自然な変化・風合いをそのまま活かしたり、歴史を感じさせるレトロな家具や装飾品を取り入れるなど、古びた素材や空間の造りをそのまま活かしつつ懐かしさと独特の魅力を感じさせるヴィンテージライクな空間です。新旧の要素を程よくミックスさせ、居心地の良い空間を演出します。
特徴としては①木材とガラス、金属と布など、質感の異なる素材の組み合わせ、②経年による風合い、または時間の流れによって生まれる変化に手を加えた跡をあえて残したような演出、③廃材を生かしたリユース、リメイク品による室内装飾や調度品、があげられます。
工場跡地のメカニックな要素を残したコーヒーロースタリー、古民家の造りを生かしたカフェなどは代表例ですし、無骨な印象を与える厨房機器をあえて見えるように配置し、賑わい感やライブ感を演出するレストラン、提灯のぶらさがるレトロな印象の店頭にモダンな内装に仕上げた居酒屋などもこのタイプと言えます。
2021年、ブルーボトルコーヒーが初めて中国・上海に進出しオープンしたYutong Cafeは、1926年に建てられた赤レンガの西洋風建築の外観を活かした造りに、中はブルーボトルの特徴である現代的でシンプルな空間が広がります。地元の木材を用いて作られたバーカウンター、ヴィンテージの椅子、伝統的な中国の提灯に着想を得た籐製のライトと、新旧の要素が混ざりあったノスタルジックな空間です。(参考:BLUE BOTTLE COFFEE CAFE in CHINA)
パラドー社の「Oak Memory Natural」は、名門サッカークラブ・シャルケのファンクラブLa Ola Club(レストラン・バー)で部分的にアクセントとして使われており、直線的で硬質な空間を程よく柔らかな印象にまとめています。深いブラウンのオーク材は、空間の構成要素や素材が多くなりがちなヴィンテージ空間に落ち着きをもたらしてくれるでしょう。
出典:https://parador.jp/gallery/laolaclub-schalke