カタログダウンロード
下記項目にご入力のうえ、送信ください
2024.5.29
【徹底解説】フランス流インテリアデザイン・間取りの特徴
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー/キッチンスペシャリスト猿渡 奈央
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
「芸術の都」と言えば、今も昔もフランスの首都・パリのこと。フランスは長い歴史の中で、多くの芸術的革新を生み、優れた芸術家や文化人を輩出してきました。フランス人のメンタリティの根底には、世界の芸術と文化を牽引してきたという自負があり、人々の住居を飾るインテリアにもその想いとプライドが滲み出ています。今回はそんなフランスのインテリアについて、フランス人の暮らしぶりや国民性を交えながら解説したいと思います。
目次
有名なエッフェル塔を臨む、フランス・パリの風景(参照元:AdobeStock)
フランス人のインテリアに対する姿勢
フランス人は自国の歴史と文化に誇りを持っており、古くからの伝統を大切にする傾向が他国より強いのがひとつの特徴です。例えば、1994年に制定された「フランス語の使用に関する法律(通称:トゥーボン法)」では、広告、契約書、製品の使用説明書や会議資料などにおけるフランス語の使用を義務付け/外来語の使用を規制しています。
言語は文化醸成と密接に関係するため、フランス政府が文化保護の観点から母国語の保護に熱心であることは理解できますが、かつてヨーロッパの強国として栄華を誇った自国の地位を保持したいという危機感の表れなのかとも取れる面も否めません。現在でもフランスは国際社会で重要なプレイヤーではありますが、英語の音楽やIT用語が氾濫する中、母国語と文化の弱体化を懸念する声が目立つのがフランスの現状です。
ことほどさように自国文化にこだわりの強いフランスの人々ですから、自宅のインテリアにもフランス独自の物や古くても質の高い物を取り入れることを好むのは不思議ではありません。また、インテリアを自己表現の場として考え、自分の趣味を反映させたスタイリングをする人が多いのもこの国の特徴です。古い物とモダンな感覚を掛け合わせ、新たな価値を生み出すことに秀でた国民性がインテリアにも表れていると言えます。
クラシックなアイテムを使いつつ斬新さを感じさせるコーディネートが上手いのがフランス人(参照元:AdobeStock)
フランスの家の特徴・間取り
パリには19世紀や20世紀初頭に建てられた古い建物が多く存在しますが、老朽化した部分のメンテナンスや、現代の生活に適したリノベーションを施して、アパルトマン(アパート)やコンドミニアムとして上手く活用されています。石造りやレンガの外装、美しい装飾を施した壁や天井を備えた住宅は、街の景観を守る上でも重要であるとして、伝統を重んじるフランスの人々に大切に使われているのです。
アパルトマンが並ぶパリの路地(参照元:AdobeStock)
リビング
リビングエリアに設置されたフレンチバルコニーは、フランスのアパルトマンの特徴のひとつです。バルコニーのような景観を持っていますがバルコニーとしての実用性はなく、装飾的意味合いの強いものです。繊細なデザインで作られたこの鉄製の手すり/フェンスは建物の外観を魅力的に見せるのに役立っており、特にパリやリヨンなどの歴史的都市では、フレンチバルコニーが街並みの美しさを際立たせてくれるものとして重要視されています。
フランスのアパルトマンに多く見られるフレンチバルコニー(参照元:AdobeStock)
歴史的建築を改装したアパルトマン内部では装飾が施されたシーリングや豪華な建具が使われていることが多いため、設置するアイテムはできる限りシンプルで、かつエレガンスを感じられるものが好まれるようです。インテリアの中でフランス人が特にこだわりを見せるのが、照明とアート。天井が高い住居においてシャンデリアなどの存在感のある照明を飾ると、空間の寂しさが打ち消されて全体のバランスが取れるのです。
また、フランスの人々は住居、特にリビングエリアに絵画や彫刻などのアートを飾ることを好みますが、これは歴史に培われた芸術感度の高さから来る傾向と言えるかもしれません。数世紀にわたって芸術の中心地として栄えたパリにはパトロンとして芸術家を支えた富裕層も多く、世界中の美術品を所蔵する美術館も多数存在します。そのため一般市民も芸術作品への接触機会が多く、アートが生活の一部として自然と取り入れられていったのでしょう。
存在感のある照明とアートが個性をもたらすリビングルーム(参照元:AdobeStock)
子供部屋
フランスの子供は生まれた時から自分の部屋を持っていることが多いと言われます。親が早くから子供のパーソナルスペースを確保する理由は、子供の自立を促すという目的の他に、夫婦の時間を大切にするためという背景もあります。
子供用家具や遊具の素材には天然木やコットンを中心とした自然素材が好んで用いられますが、色使いにはフランスらしいこだわりが見られます。ナチュラルであたたかみのある中にも、パステルカラーやビビッドカラーでアクセントを付けるなど、子供たちが楽しい気持ちで過ごせるよう工夫されています。
フランスの子供部屋の一例(参照元:AdobeStock)
キッチン
食文化を大切にするフランスでは、日本同様、家庭でも毎日料理をすることが一般的です。フランス人にとって食事は単なる栄養補給の手段ではなく、家族や友人と会話をしながら楽しむ人生の一部。特に夕食は、アペロ(前菜)から始まりデザートまで、お酒を飲みながらゆっくりと、2時間以上の時間をかけて楽しむのがフランス流です。ゲストを招いた際は、ホストがキッチンに立ちながらディナーの準備を進めることも多いため、オープンキッチンが主流になっています。毎日使うスペースだからこそ、機能性と美しさの両立が求められます。
フランスのキッチンの一例(参照元:AdobeStock)
間取り
都市部のアパルトマンでは、ワンルームタイプの「スタジオ」からメゾネットタイプの「デュプレックス」まで様々な間取りがあります。かつてのアーティストや芸術家が使用していた作業スペースを住居に改装した「アトリエ」タイプは、壁の少ないオープンスペースと大きな窓で開放感があり、人気が高まっています。
アトリエタイプのアパートメントはオープンスペースで窓が大きい(参照元:AdobeStock)
フランス的インテリアデザイン
最後に、いまフランスでトレンドにあげられる2つのインテリアスタイルを紹介します。
フレンチカントリー+ワビ・サビ
伝統的なデコレーション要素を持つフレンチカントリーと、無駄な装飾を排したワビ・サビスタイル。一見相反するスタイルのようですが、伝統と革新、古いものと新しいもの、といった対極を組み合わせて新しい価値を生み出すのが得意なフランスらしく、この2スタイルのブレンドが新鮮な驚きを生んでいます。“不完全な美しさ”を共通点とする両スタイルがタッグを組むことで、中間色と有機的フォルムの組み合わせから生まれる居心地の良さが最大限に発揮されています。
フレンチカントリー+ワビ・サビインテリアの一例(参照元:AdobeStock)
【パラドー社のおすすめ床材】
Dolomite white(ドロミテホワイト)
このスタイルのニュートラルカラー展開に最高になじむのが、ドロマイトをモチーフにしたドロミテホワイト。高貴な鉱石として知られるドロマイトをモチーフにした床材は、有機性を感じるとともに、フレンチカントリーのエレガンスを下支えする立役者となります。
Oak Explorer caramel(オークエクスプローラキャラメル)
オーク材が作り出す複雑な表情にキャラメルを焦がしたようなダークブラウンを合わせた、味わい深いデザイン床材。古材感があり、経年劣化を美とするワビ・サビの精神を体現する、好相性の床材です。
バイオフィリック・デザイン
イギリス流インテリアデザインの回でも紹介したように、インテリア業界でのバイオフィリック的アプローチは世界的な流行になっています。歴史的建造物や伝統的な住宅が豊富なフランスでは、昔から内外装に使われていた石材・レンガ・鉄などと馴染みの良いアイテムを使い、調和を大切にしたコーディネートが好まれています。写真のコーディネート例では、バイオフィリック・デザインを取り入れたシャンデリアにフランスらしいこだわりを感じます。
バイオフィリック・デザインの一例(参照元:AdobeStock)
【パラドー社のおすすめ床材】
Oak Memory natural(オークメモリーナチュラル)
オークの年輪が職人の手によって忠実に再現され、生命力あふれるParador社の傑作床材。自然とともに暮らすことで活力を得ようとするバイオフィリックの思想にマッチし、完璧なハーモニーを醸すパートナーとなります。
Granite anthracite(グラニットアンスラサイト)
木の家具や観葉植物によって自然を取り入れることが多いバイオフィリック・スタイルの床面は、濃色の石材モチーフで引き締めると空間のメリハリが付きます。日本では希少石材に数えられる御影石に美しい黒炭を混交した独特なニュアンスが、唯一無二の存在感を放ちます。