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2022.6.20
トラブル続きの賃貸アパート経営 コスパ最高な床材とは?
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
老後の年金の不安から、若い世代でも株や仮想通貨、NISAのように貯金を資産運用に回すような層が増えてきました。その投資の視線は金融商品だけでなく、マンション・賃貸経営のような不動産物件にも向けられています。
今回は、手軽に始められる投資として人気を持つ「賃貸経営」を始める際の費用と床材選びの注意点について解説をおこないます。
賃貸向け物件の注意点
賃貸物件の内装選びと自宅の内装選びとで異なるのが、賃貸物件を経営するのであれば、費用対効果を重視した内装材選びがより肝要になってくる、という点です。要するに、自宅であれば自身の趣味や裁量である程度自由に内装材選びが可能ですが、賃貸物件を運営するということは、規模の大小はあれど、自身がその物件の支出入を計算する必要が出てきます。
すなわち、収入>支出となるようなビジネスモデルを打ち立てる必要があるわけですが、下記の表のように「収入」は基本的に家賃収入となる一方で、「支出」に計上される項目はそれよりも多く、慎重な計画を行わないと思ったより手元にお金が残らないどころか、賃貸経営がマイナスになってしまうことさえあります。
収入 | 支出 |
---|---|
+家賃収入 | ー修繕・改装費用 |
ー固定資産税 | |
ー火災保険 | |
ー管理費 | |
ー利息(借入のある場合) |
一般的なビジネスモデル同様、賃貸経営の要点も「収入を増やし」「支出を減らす」という点に集約されるのですが、支出の項目で実際に自分で自由に減らせる項目というのは「修繕・改装費」くらいであることに気が付くと思います。
つまり、一度物件が決まってしまったら「いかに修繕・改装に関わる費用を抑えられるか」こそが賃貸経営ビジネスの肯綮にあたるというわけです。今回はその中でも特に費用対効果の大きい「床材の費用対効果」にテーマを絞って解説をおこないます。
床材と賃貸経営の関係性
床材の修繕・回収費用は、賃貸経営の中でも特に費用のかかる部分として予め見積もっておかなくてはいけません。以下、それぞれの床材にまつわる初期費用とランニングコストの関係性を見てみましょう。
初期費用
賃貸経営ビジネスに参入する際、あらかじめ持っている物件を活用するのか、賃貸用の物件を購入するのか、その物件が新しいのか古いのか、など初期条件に応じて異なりますが、基本的に「賃貸向けに改修する」必要があると想定すると、改修の中でも特に床材の占める割合は大きくなりがちです。
以下に、賃貸経営の床材施工に関するキーワードをいくつかまとめました。個々のコストや適した床材の種類に関しては、次チャプターの「ランニングコスト」の項を参照してください。
重ね張り
既存の床の上に新しい床を張る手法です。張替えに比べ、下床を剥がす手間が省けるため安く早上がりですが、下床自体が傷んでいると踏み心地が悪かったり、床の種類によっては重ね張りができないタイプのものもあります。また、釘や接着剤を使用せずに施工する場合、将来的な原状復帰や部分交換も容易です。
床の張替え
既存の床ごと張り替える手法です。壁紙や巾木もまとめて変えられるので、部屋のイメージを一変させることができます。また、下床を頑強に固定するので、重ね張りよりも床材自体が安定しやすいです。一方で、重ね張りと比較して大掛かりな工事が必要となるため、施工時はもちろん、改修時にも逐一手間とコストがかかるようになります。
床の部分補修
床の傷が軽微であったり、そもそも張替えを必要としないような状況であれば、部分補修やクリーニングで事足ります。デザインや部屋の雰囲気を変えるわけではないので、あくまで「現状維持」が前提となります。
DIY施工
コストを浮かせたい場合、自身でDIY施工可能な床材を購入してきて自身で施工する方法があります。クッションフロアやフロアカーペットのような床材は難易度が低く、ホームセンターなどで安価に購入することが可能ですが、後述の通り傷みやすく、デザインが一辺倒になりがちで、入居者を魅了するような意匠性・デザイン性を追求するとなると使用しづらいケースが多々あります。
ランニングコスト
さて、注意しなくてはいけないのは初期費用だけではありません。賃貸ビジネスの難しいところは、床にしろ壁にしろ水回りにしろ、一回施工したら終わりではなく、必要に応じて部分的な修理・修繕や場合によっては総工事が必要になってくる、という点です。
そのため、必ずしも「初期費用の安い床材」を選ぶのが最適解というわけではなくなります。いくら初期費用が安くても、毎年のように補修や工事を必要とすると(※例:家具の重みによって生じた床材の凹みは通常損耗と見なされて賃貸人負担)、逐一手間暇とコストがかかり、まさに「安物買いの銭失い」となってしまうわけです。
カーペット | フローリング | クッションフロア | ドイツ製SPC | |
初期投資(30㎡) | 15~30万円 | 20~40万円 | 10~20万円 | 20~40万円 |
耐用年数 | 5年前後 | 10~15年 | 5年前後 | 15年以上 |
集客力 | △ | ◎ | △ | ◎ |
重ね張り | 可能 | やや不向き | 可能 | 可能 |
張り替え | 可能 | 可能 | やや不向き | 可能 |
解体の容易さ | 容易 | 難しい | 容易 | 容易 |
(※表の値は参考値)
もちろん、床材の種類の中にも「耐久性の高いもの/低いもの」「安いもの/高いもの」「施工が簡単なもの/難しいもの」と種類が分かたれているため断定的な一般化はできません。
各床材別特徴
各床材カテゴリには賃貸経営に当てはめた際のメリット・デメリットが存在します。特に発生しやすいトラブルを交え、それぞれの特徴を記載していきます。
カーペット
賃貸物件にカーペットを使用することのメリットは、その施工・取り外しの容易さです。また、平米辺りの単価も、施工費を含め後述するフローリング等よりも安く、初期費用としてはお手軽な投資といえるでしょう。また、触り心地が柔らかい、防音効果がある、などの長所にも恵まれています。
一方で、賃貸物件で使用する床材としてカーペットは適しているとは言いづらいデメリットもいくつかあります。まず、掃除がしづらいという欠点を持ち、重い家具の跡などもついてしまいがち(賃借人の復旧義務なし)です。また、カビやダニの温床にもなりやすく、特に入居者の生活に支障をきたすようなダニや害虫が発生した場合、その責任は賃貸人に科されます(※賃借人の善管注意義務違反の場合賃借人の責任)。
懸念トラブル
- ダニ・カビ
- 家具による凹み
- 汚れ・掃除の手間
フローリング
厳密に区分すると、フローリングの中にも「表面がシートのフローリング」「無垢フローリング」「リフォーム用の薄いフローリング」など多くの種類が存在し、樹種やスペックに応じて価格・施工性もまちまちです。
一般的に、無垢フローリングや挽板を用いたフローリングは値段も高く、施工が難しくメンテナンスがしづらいことから、この手の賃貸物件では敬遠される傾向にあります。樹種にもよりますが、材料代だけで平米2万円~3万円程度となり、30㎡の改修を想定すると工事費用など含め100万円規模の予算が必要になります。
そのため、価格的にリーズナブルで、手入れが比較的容易な「表面がシートの複合フローリング」が、賃貸経営を目的とした物件では多くを占めることになります。重ね張りできるタイプのフローリングもありますが、市場でスタンダードなのは張替えによる捨て貼り工法で、平米辺り1万円~1万5000円前後の費用が見込まれます。
表面がコーティングされていても、構造部はベニヤが使用されており湿度に弱く、環境によっては床鳴り、あばれの原因ともなります。
懸念トラブル
- 床鳴り(賃貸人の責任。生活に支障が出る場合入居率に影響あり)
- 湿度による突き上げ(一般的に賃貸人の責任。大量の水をこぼした、といった善管注意義務違反の場合議論となる)
クッションフロア
施工性という面では、数ある床材の中でも最も貼りやすく剥がしやすい部類に位置します。既存の床のうえにひけば瞬時に模様替えが可能で、平米辺りの単価も各床材カテゴリの中でも安く、プロは勿論賃貸家主自身がDIYで施工することも可能で、まさにフレキシビリティに富んだ床材と呼べるでしょう。
一方で、賃貸物件の入居者への魅力、デザイン性、耐久性などの面に関して言うと、やや訴求しづらい部分があります。柔らかく施工しやすいという製品特性上、重い家具などの凹みに対しては弱く、一回一回入居者の退去時に改修が必要になるかもしれません。デザインも基本的にユニーク性には欠け、良くも悪くも「完全に初期費用重視」の床材の選択肢と呼べるのではないでしょうか。
懸念トラブル
- クッションフロア自体はトラブルの元になりにくい(取り換えれば済むので)
- 家具の重さによる凹みが発生するため、そのたびに交換が必要となるケースは多い
- 重ね張りの場合、クッションフロアの下床が腐食するなどのトラブルが発生するので注意が必要
ドイツ製SPC
SPC床材は、欧米風リフォーム文化とともに発展した床材カテゴリです。そのため、元々のコンセプトである「重ね張り」が可能で(欧米ではモルタルの下床に直接施工されることもあるため、下床のコンディション次第で張替えも可能)、退去時にもすぐに取り外せます。
本来100%耐水性を持つという強みをもった塩ビフロアの発展形として開発された経緯を持ち、そのため耐汚性・耐水性に優れ、湿度や乾燥環境でも影響を受けません。
ドイツの認証並びに独自の研究機関での自社試験の2つのフィルターを通じ、製品の耐久性には絶大な自信を持っており、データシート上の値では居住空間における耐用年数は最低で15年を謳っています(※パラドー本社参考値)。特に凹み耐性に優れ、賃貸オーナーの頭痛の種にもなる「重い家具による凹み」も極めてつきにくい仕様です。
100%オリジナルのデザインを、ドイツのデザイナーチームが全て自作しているためデザイン性にきわめてすぐれ、特にドイツの国樹である「オークデザイン」に関しては世界でも有数の実力を誇ります。賃貸入居者のなかでも「デザイン」に魅力を感じる若い層に訴求性が高く、入居率アップが見込まれます。
懸念トラブル
- ドイツ製SPC床自体はトラブルの元になりにくい
- 重ね張りの場合、クッションフロアの下床が腐食するなどのトラブルが発生するので事前に注意が必要
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