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2022.12.8
モンテッソーリ/シュタイナー教育の理念を取り入れた子供部屋づくり
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
著名人が幼少期に受けた教育法として耳にする機会も多い、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育。どちらも、子供の自立性や創造力・想像力を育むことに主眼を置いた、ヨーロッパで確立された教育メソッドです。モンテッソーリ教育やシュタイナー教育を保育・教育機関で受けさせようとすると日本ではまだ門戸が狭いですが、そのコンセプトを家庭で取り入れることはさほど難しくありません。
今回は、2つの教育法の成り立ちと理念を理解しながら、両者のメソッドを取り入れた子供部屋づくりのポイントを解説します。
従来型の教育と、モンテッソーリ/シュタイナー教育
モンテッソーリ教育もシュタイナー教育も、従来の日本型教育とは目的を異とするオルタナティブな教育法です。日本型が知識重視、大人が子供に教授するスタイルであるのに対し、2つの教育法は子供が自ら課題に向き合い、解決することを重視しています。共通しているのは、子供の自立性を育むこと、ひとりひとりの個性を大切にすること、縦割り保育(異年齢の子供たちが共に活動する)ことです。
ITやロボット技術の進歩によって人力で行われてきた仕事が確実に減っていく中、社会的に生き残れるのは、人間にしかないスキルや新しいものを生み出す力を持った人。これからの時代を生き抜くために、自由な発想で生きる力を身につけてほしい、そう願う親にとって、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育は魅力的に映っているようです。
モンテッソーリ教育とは
それでは、それぞれの教育法の歴史や理念を紐解いていきましょう。モンテッソーリ教育は、イタリアの医師であり教育家であるマリア・モンテッソーリ博士によって20世紀初頭に提唱された教育法です。「子どもには、自分を育てる力が備わっている」という「自己教育力」を前提とし、子供の才能を最大限に引き出すことを目的としています。
モンテッソーリ教育では、従来日本型の「先生が教え、子供が理解し覚える」という形でなく、子供が自ら課題を取捨選択し、間違えれば自分で気付いて訂正することを重視します。自己教育力が存分に発揮できる環境を大人が整え、子どもの自発的な活動をサポートすることで子供は自ら成長する、という考え方です。
【モンテッソーリ教育の理念】
- 子供が主役で大人はサポーターである
- 子供の「敏感期」に適切な教具(玩具 + 教材)と環境を提供する
- 道具は(子供サイズの)本物を用意し、扱い方ややり方を明確に提示する
- 子供が集中している時は質問したり中断しない ・子供が希望しないことは無理強いしない
モンテッソーリスタイルの子供部屋づくり
上記の理念を念頭に置きながら、モンテッソーリスタイルの子供部屋を作るポイントを考えてみます。子供の自主性を育むために重要なのは、大人の手を借りなくても生活や遊びが完結する環境を整えることです。レイアウトの際に、以下の3点を取り入れてみてください。
- 「お仕事」机を用意する
- ひとりで集中できるスペースを作る
- いつでも手が届き、取捨選択しやすいディスプレイと収納にする
1.「お仕事」机を用意する
子供が日常生活や教具を使って行う活動を、モンテッソーリ教育では「お仕事」と呼びます。子供が興味を持った時にいつでも自主的にお仕事に取り組めるよう、子供サイズの専用机・椅子を用意しておきます。
2. ひとりで集中できるスペースを作る
色彩心理学によると、鎮静効果のあるブルーには心を落ち着かせ、物事に集中しやすくする効果があると言われています。子供部屋の壁の一部やカーテンなどに部分的に取り入れると、子供が「お仕事」や勉強、遊びに集中して取り組む助けになります。モンテッソーリメソッドを用いた教具には色彩感覚を養う意図でカラフルな物が多くあるので、教具に集中できるよう、内装のカラーリングはできる限り控えめに、色数を抑えるのが好ましいでしょう。
いわゆる「隠れ家スペース」を作るのも子供の集中を促すひとつのアイデアです。ベッドの下の学習スペースや小さなテントなど、家族の目に直接触れない場所を作ってあげると自分の世界に没頭しやすくなります。 子供部屋の環境整備は、あくまで子供が自分の好きな色や物に囲まれて好きなことに没頭できるようにすることが目的ですので、できる限り子供の希望に沿えるよう、相談しながら一緒に内装や家具を選ぶことが大切です。
3. いつでも手が届き、取捨選択しやすいディスプレイと収納にする
子供の興味・関心を促し、また、日常生活や「お仕事」に取り組みやすくするために、使用するものはすべて子供の目に見える形で置いておくことが好ましいです。教具やおもちゃの収納には、手持ちの物をひと目で把握できるオープンシェルフがおすすめです。服や細かなおもちゃ、食器類など、見える形で置いておくことが難しいものは、引き出しにイラスト付きでラベリングするなど、どこに何があるかを子供が自分で認識できるようにします。子供が自分で選択しやすいだけでなく、片付けしやすい点もメリットです。
シュタイナー教育とは
シュタイナー教育(ヴァルドルフ教育)は、オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナー博士によって20世紀初頭に提唱された教育法で、1919年にドイツのシュトゥットガルトに設立した「自由ヴァルドルフ学校」で最初に取り入れられました。子供を「自由な自己決定」ができる人間に育てることを目的とし、個性の尊重と、自立性が育まれることを重視した教育を行なっています。乳幼児期を健康な身体づくりの時期として戸外遊びを積極的に取り入れたり、自尊心や自己肯定感を高めるために初等部では評価を行わないなど、独特の方針を持っています。
【シュタイナー教育の理念】
- 「身体(意志)」「心(感情)」「頭(知性)」の調和を目指し、子供の「生きる力」を育てる
- 感覚を使った体験型の学び(教育芸術という考え方)
- 幼い頃から美しいものに触れることが心を育む
- 生活や環境が真に「自由な人間」を作る
- ひとりひとりの個性を大切にし、自尊心や自己肯定感を高める教育
- 授業は芸術的アプローチで行われる(オイリュトミーやフォルメンなど)
シュタイナースタイルの子供部屋づくり
シュタイナースタイルの部屋づくりでは、感覚的に学びを得られることがポイントになります。手に触れるものには温かみのある自然素材を選んで五感を刺激し、花・葉・木の実など自然の創造物から造形美を学びます。シュタイナー教育では、子供がいる場所の環境を整えることが非常に重視されています。
- 素朴で温かみのある自然素材を使う
- 芸術性や季節感のある美しいものを飾る
- 胎内を思わせる淡いピンクを内装に
1. 素朴で温かみのある自然素材を使う
部屋に置く玩具や家具は、子供の肌にやさしく、五感を刺激する天然の素材を使ったものを取り入れます。素朴で未完成、シンプルなものほど、子供の好奇心や創造力を掻き立てるとシュタイナー教育では考えられています。散歩の途中で見つけた美しい落ち葉や木の実も見立て遊びの立派な道具。発想力や想像力を育むのに役立ちます。
2. 芸術性や季節感のある美しいものを飾る
シュタイナー教育は、心を動かす体験を重視します。花や草木、絵画やオブジェなど、季節の移り変わりを感じられるものや芸術性のあるものを部屋の中に飾り、子供が美しいものに触れる体験を多く提供しましょう。
3. 胎内を思わせる淡いピンクを内装に
シュタイナー教育を行なっている教育施設のインテリアに注目すると、ピンクが多用されていることに気付きます。サーモンピンクや温かみのある淡いピンクは母親の胎内を想起させるカラーで、子供に安心感を与えると言われているためです。壁や天井など大きな面積で採用することが難しい場合は、カーペットやカーテン、ベッドリネンなど、取り入れやすい場所に使ってみると良いでしょう。 淡いピンクはライトブラウン系との相性が良いので、木質・木目調フローリングとのコーディネートがしやすい色です。木目の表情のある床材は、自然素材の玩具や家具とも見事にマッチします。床材選びの際は、身体を思いきり動かしても階下に音が響きにくく、子供の足にやさしいクッション性の高いもの、また、子供が思い切り創作活動をしても汚れが落ちやすく傷が付きにくい素材が最適です(Parador社の製品の特徴を見る)。
【参考・出典】
- 日本モンテッソーリ教育綜合研究所「モンテッソーリ教育とは」
- 日本シュタイナー学校協会「シュタイナー教育の概要」
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