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2024.2.21
環境に優しいエコ床材にはどんなものがあるのか?
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー/キッチンスペシャリスト猿渡 奈央
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
SDGsを中心に、様々な業界に「エコ」や「持続可能性」の在り方が問われつつあります。国や地域としての規制も勿論のこと、消費者の購買行動も次第に環境への優しさなどから選ばれるようになってきました。
当然のことながら、毎年80万戸が建てられる住宅市場と、そこに費やさされる膨大な量の建材も、こうした「環境への負荷」が考慮されなくてはいけない分野であり、欧米先進国を中心に新素材の開発が進んでいます。
今回は、環境に優しいエコ床材の定義とどのような床材がそれに当てはまるのかについて解説をおこないます。
環境に優しいエコ床材とはどのようなモノか?
環境に優しいエコ床材は、「原材料」「製造工程」「施工・耐用年数」「リサイクル」など様々な側面からとらえることができます。
原材料
天然資源であること、あるいは再利用可能な原材料を使っていること、などが環境に優しい原材料と言えるでしょう。例えば、木質由来の無垢フローリングや、成長の早い竹やコルクを用いた複合フローリング、牛乳パックの原材料にも用いられるオレフィン系床材がこうした環境に優しい原材料として受け入れられています。
もっとも、環境に負荷のかかりづらい原材料を使っていたとしても、森林破壊をもたらすような環境下で伐採された木材などを使っていては元も子もありません。特に無垢フローリングなどの場合はその材料が持続可能な木材を使っているか、FSCやPEFC認証の有無で推し量ることができます。
製造工程
木質フローリングにしろ塩ビタイルにしろセラミックタイルにしろ、一般的な床材の製造工程では大きなエネルギーが用いられることとなります。化石燃料は環境への負荷が多く、欧米企業は世界に先んじてクリーンエネルギーへの移行を取り始めています。
製品のライフサイクル(製造から廃棄、リサイクルまでの一連の流れ)の環境への負荷といった点では、EPDによって数値化がなされ、GWP(Global Warming Potential)といった項目で表されます。企業によって製造工程が異なるので異なりますが、基本的には木質や自然素材由来の床材であればこの値が低く、二酸化炭素を多く放出する人工床などでは数値が高くなりがちです。
(Hardwood Floors, Parador社データシート等を参照に作者作成)
施工・耐用年数
いくら製造時に二酸化炭素を放出しないとしても、施工時に使用する接着剤や付属材の量が多いと元の木阿弥です。欧米では施工の際に接着剤や釘を用いない、解体やリサイクルの容易なクリック式の床材を採り入れており、施工方法としては最も環境への負荷が少ないと言えるでしょう。
また、一般的には耐用年数の多い床材は製品のライフスパンが長く、環境への負荷が軽減されがちです。逆に、製造コストは安くても、毎年のようにリノベしなくてはいけないような建材は、この意味ではエコとは言えません。
リサイクル
最後に、製品のライフサイクルの一番最後に位置するリサイクルの観点から環境への負荷を言及しましょう。各国の規制によりリサイクル部分でのアセスメントは評価が分かれますが、一般的には「素材ごとに処理しやすい」床材であればリサイクルがしやすく、環境に優しいといえます。
逆に、製品に複数の原材料が盛り込まれており別々のリサイクル工程を経るような製品の場合、リサイクルできる割合が少なく環境への負荷が高まります。
どのような床材が環境に優しいのか?
上記のような条件を元に、環境に優しい床材をまとめてみましょう。製品の一連のライフサイクル(製造、流通、リサイクル)などを査定したGWP(Global Warming Potential)基準によると、メーカーによって数値は異なるものの、以下のような床材は一般的に環境への負荷が低いとされています。
- 無垢フローリング
- 複合フローリング
- セラミックタイル
- コルク床材
- 畳(たたみ)
- オレフィン系床材
- リノリウム床材
もっとも、床材のカテゴリだけではなく、最終的にはそのメーカーの採用している製造工程、施工方法なども密接に絡み合っており、一概に算定することは難しいと言えるでしょう。極端な話、環境への負荷の少ない無垢フローリングであっても、製造過程で多くの化石燃料を用いていたりするとこのGWPの値(㎡辺りの製造にかかる二酸化炭素の量)は高くなります。
環境先進国の床材への取り組み
環境問題への取り組みでは常に厳しい基準を要求される欧米の床材メーカー。その中でも特に環境意識の高いドイツでは、こうした様々な観点からの「環境への優しさ」を考慮した新しい建材の注目が高まりつつあります。
例えばドイツのParador GmbHの産んだModular One Hydronは、原材料を環境への負荷の少ないオレフィンに統一し、材料調達・製造・施工・リサイクルの四つの観点から高い環境への優しさを持ちます。牛乳パックや哺乳瓶にも用いられるオレフィンのみを素材とすることで、環境だけでなく人体への害も与えません。リサイクルの点でも同一素材を用いていることで再利用しやすい構造となっています。
エコの観点だけではなく、見た目・耐久性の面でも抜群の新世代床材で、本国ドイツを中心にヨーロッパや北米で人気を博しています。
このように、技術の進化と共に建材のあり方も進化しつつあります。今後も各国による「エコ建材」の発展には目が離せません。
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