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2024.3.6
エシカル消費客をターゲットとした観光施設の床材選び
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー/キッチンスペシャリスト猿渡 奈央
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
今までの「価格」や「使いやすさ」を元に購買行動をおこなっていた消費者の動きに、近年新たな嗜好が加わったと言われています。それは、環境への負荷や持続可能性を考慮した「エシカル消費」と呼ばれるもので、特にミレニアル世代やZ世代の特徴として知られています。
こうしたエシカル消費は、単なる日常の製品選びだけでなく、観光業(エコツーリズム)や外食産業にも影響を与えるようになってきています。
エシカル消費とは
エシカル消費とは、購買時に「環境や社会への配慮」を考慮して購買決定を下す消費行動のことです。具体的には、以下のような購買行動がこれに当てはまります。
- 「アニマルウェルフェア(動物の飼育環境)」に配慮された豚肉を購入する
- リサイクル可能な建材を購入する
- 森林破壊をもたらさない原料で作られた木製のおもちゃを購入する
- フェアトレードで作られたチョコレートを購入する
ヨーロッパではこのエシカル消費の割合が特段高く、消費者の80%が多かれ少なかれこのエシカル消費を念頭においた購買行動をおこなっていると言われています。対してアメリカでは65%、日本では消費者の半数以上に当たる59%がそれぞれエシカル消費をおこなう割合とされています。
こうしたエシカル消費が必要とされている背景には、昨今のSDGsの流行があります。消費者の行動理念の一つにすでに「環境」「エコ」「持続可能」といったワードへの理解が染みついており、似たような製品が棚に並ぶ場合、消費者はこうした条件を満たす製品を嗜好するような傾向を示しています。
エシカル消費に基づいた消費者の行動原理は、メーカー側の製造工程や戦略にも大きな影響を与えるようになりました。上述のように、特にエシカル消費の関心が高いヨーロッパでは、メーカー側でのブランディングの一環として「環境配慮」に特段気を付けた製品開発に余念がありません。
こうした傾向は建材産業でも同様で、森林破壊をもたらさない、CO2 消費量の少ない、環境へのインパクトの少ない、といった条件の開発が日進月歩でおこなわれています。
エシカル消費と観光業
企業の社会的責任が叫ばれる現在、このように「環境配慮」の製品や原材料を使用することが既にマーケティング上自然の流れになりつつあります。この傾向は、外資企業や大企業のみならず、旅行客をターゲットとするローカル企業やB to Cビジネスでも同様で、例えばホテルや飲食店でも、環境に配慮した建材を用いることが一つのトレンドとして定着しつつあります。
こうした環境配慮型の観光業は特に環境保存に高い関心を示す、リゾートの利用客との親和性を持ちます。バリ(インドネシア)、インド、タイなど西欧環境客に人気のリゾート地では「環境に優しい建材を使った建物」「地元の食材を使った料理」「太陽光を用いた循環型エネルギー」などの特徴を持つグリーンホテルの需要が高まっています。
こうした「エシカル消費」を軸とした集客を試みるホテルやレストランには特徴がいくつか存在し、個々のケースによって訴えたいポイントは異なります。
既存の建物の再利用
環境への負荷という面で欧州を中心に人気を博している形式が、「古い建物」の再利用です。日本と異なり、レンガ造りで戦前の建物が多く残るドイツやフランス、イギリスなどでは過去倉庫や酒造所、工場の跡地などがレストランやホテルとして生まれ変わるケースが多くあります。
建物としての骨組みは残したまま、内装を新しく生まれ変わらせるという手法は、ヨーロッパの持つクリック型の床材の施工方式と高い親和性を持つことで知られています。
環境への負荷の軽減という意味では勿論のこと、古い建物の保持、趣のあるレトロなデザインと機能性の融合、といった側面から積極的に取り入れられています。
持続可能な建材の使用
バリやカナリア諸島といった欧米人に人気のリゾート地で人気な手法が、環境への負荷の少ない建材、リサイクル可能な建材、などで作られた建物です。代表的な所では、竹や無垢フローリングといった自然素材を用いて建てられたもの、あるいは廃材や地産地消材を用いて作られた施設等です。
また、無垢木材以外にも環境への負荷の少なく再利用しやすいオルフィン系の床材、コルク系、セラミックタイル系の床材などもエコであると見なされやすい建材の特徴です。
健康志向の建材
多くの場合、環境への負荷の少なさやエシカル消費を思考する購買者は、同時に健康への影響も購買行動時に考慮に入れがちです。そうした意味では、例えばホルムアルデヒドを含むVOC(揮発性有機化合物)を発散するような建材は避けられるべきと言えるでしょう。
特に欧米先進国ではこうした建材の健康意識の高まりが強く、流通する建材においても厳格な検査に加え、独自の認証をマーケティング目的で取得する企業が増加しています。
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