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2024.4.12

エシカルデザインを用いた床材の選び方

監修

インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー/キッチンスペシャリスト猿渡 奈央

海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。

20世紀を通じ、人類の経済活動は「より安く」「より多く」生産し、その背後にある人間の気持ちや環境を配慮に入れず成長を遂げました。アメリカの有名大学のMBAの授業では「より購買欲を掻き立てるデザイン」の勉強がなされます。

こうした反動からか、生産者・消費者本来の幸せを追求する「エシカルデザイン」が近年脚光を浴び始めています。語句としての歴史が浅く、そのため様々な文脈で広く用いられ、時に混乱を招くこの「エシカルデザイン」ですが、建築・インテリアの分野でどのように用いるべきなのでしょうか?

エシカルデザインとは?

エシカルデザインとは、その他の通り「倫理的な」デザインのことで、元はWEBデザイナーによって提唱されたものだと伝えられます。今ではその「倫理的」という言葉と「デザイン」という名の持つ多様性から、インテリア、建築、ファッションなど様々な産業、分野で用いられており、文脈によっては「エシカルデザイン」「サステナブルデザイン」「エコロジカルデザイン」などの語義と重複した意味合いを持ちます。

本来の語義として、エシカルデザインは「倫理的」、すなわち消費者を不利な行動に向かわせない、無理を強いない、不当な搾取をおこなわない、など人間としてモラルのある行動指針に則って作られたデザイン一般の総称でしたが、後述の通り「環境」や「生物多様性」など、現在ではすべての意味合いにおいて「倫理的である」という形に理解されつつあります。

エシカルデザインの教義

  • ユーザビリティ:使いやすさ、直感的で安心して用いられるものとなっているか
  • アクセシビリティ:障害(身体的、心理的)などのある人にとっても用いやすい設計になっているかどうか
  • プライバシー:透明性が高く、使用者のプライバシーが守られた仕様になっているか
  • 説得:悪意のある誘導などを催すデザインになっていないかどうか
  • 集中力:ユーザーの人生に害を及ぼす中毒性などを持たないか
  • サステブル:環境や社会にとって持続可能的なサービスであること

エシカルデザインに反する例:

  • 解約しづらいようにわざと分かりづらく作られたWEBサイトのUI/UXデザイン
  • あえて中毒性を引き起こすように設計された課金向けゲーム
  • 本来欲しくないにも関わらず製品の購入意欲をそそるようにデザインされた店舗
  • 安価さを追求し、自然環境に悪い建材を用いた家
  • 現地の安価な労働力を使役して採取された原材料を用いた設計のテナント

エシカルデザインの床材分野における例

このように、元々英語圏ではWEBデザイン等の分野で用いられてきたエシカルデザインですが、やがて「持続可能であるデザイン」一般に当て嵌められるようになりました。このプロセスの中には、建材の調達、輸送、工事、リサイクル、ユーザーの健康、などあらゆる「人道的配慮」が含まれており、単に「環境に優しい」という意味合いを凌駕します。

インテリア材、建材の一カテゴリである床材においてもこのコンセプトは同じようにとらえられており、「その製品の製造から施工、使用、リサイクル」と製品ライフサイクルの全ての期間において関係者に倫理的な床材であること、が考慮された床材であることが望まれます。

環境に負荷の無い(製造時)建材の使用

原料の調達から工場での製造プロセスに至るまで、環境に負荷を与えると考えられるポイントは多く存在します。人間が社会生活を営むにあたってそもそも「負荷の全くかからない」製品を製造することは不可能であるため、実際には「比較的負荷の少ない」手法をとることが現実的であると言えます。

消費者の視点から言えば、特に原材料の環境への負荷に目が行くところですが、実際には製造工程の中で工場の排煙などがもたらす影響は非常に大きく、欧州先進国では端材の燃料使用などがおこなわれています。

フローリングの端材を燃料に用いたドイツParador社の工場

製品の環境への負荷(㎡辺りの排出する二酸化炭素量)といった切り口で、EPDはGWP(Global Warming Potential)といった定量化をおこなっています。メーカーによって製造方法が異なるため一概にどの原材料の環境負荷が少ないとは断言できませんが、一般的にオレフィンや木質など自然由来素材の場合以下のように影響が少ないと言えます。

(Hardwood Floors, Parador社データシート等を参照に作者作成)

環境に負荷の無い(廃棄時)建材の使用

製品のライフサイクル(どれだけ耐用可能か)、そして廃棄時のリサイクルの可能性などもエシカルデザインに適した床材かどうかの判断材料の一つになります。いくら製造時に環境への負荷が少なくても、1年や2年で消耗してしまうような床材であればその都度取り換えが必要になってしまい、エコであるとは言えません。

ヨーロッパで発展を遂げているクリック式の床材は、リフォームや商業利用などでその建築現場における需要が無くなったとしても、別の現場に持ち運び、床材の耐用年数の許す限り再利用が可能です。

リサイクルの取り決めなどは自治体などによって異なるためどの製品がリサイクル面で優れているとは一概に判断がしづらいですが、一般的に複数の素材が混ざっている床材よりも、一つの素材のみで製造されている床材の方が将来的なリサイクルに活かしやすいと言えます(無垢床材、オレフィン床材、等)。例えば、ドイツParador社のオリジナル製品モジュラーワンは素材すべてがオレフィンで構成されており、素材ごとに分解する必要がありません。

エシカルデザインを追求したモジュラーワン

ユーザーの健康への配慮

エシカルデザインとは、単なるエコ建材ではなく、使うモノの健康やQOLにもこだわった製品のことを指します。そのため、当然のことながらその床材の上で暮らす人々の健康に配慮した、ホルムアルデヒドなどを揮発させる接着剤を用いない、可塑剤を含まない、シックハウスの原因となる有害物質を揮発させない、などのコンセプトが求められます。

ハンブルグのヨガスタジオで用いられているオレフィン系床材

エシカルデザインとその他語句の違い

「エシカルデザイン」

・・倫理的なデザインのこと。この「デザイン」という用語にはウェブサイトのデザインから都市設計のデザインまで含まれることとなります。倫理的とは一般的に「そのサービスのプロセスに携わる全ての人(消費者、生産者、廃棄、Etc.,)すべてにとってフェアである」ということです。倫理という言葉が軸となっているため、生産者や消費者にとっての人道的、倫理的、良心的と思われるサービスのことを指し示す語句ですが、そこから拡大的に「環境」や「生物多様性」などに言及するサステナブルデザインの意味合いで用いられるようになってきました。

「サステナブルデザイン」

・・持続可能なデザインのこと。環境、経済、社会の3つの持続可能性(無理のない発展)に重きを置いた概念で、しばしば上述のエシカルデザインと同じような文脈で、生産に関わる人や自然にとって無理が無い、というように用いられます。

「エコロジカルデザイン」

・・環境に配慮したデザインのこと。サステナブルが環境、経済、社会の3つの持続可能性に重きを置いた概念だとしたら、エコロジカルデザインはその中の「環境」に重点を置いた理念と言えます。

ドイツの産んだ新世代オレフィン床材

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