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2022.7.16
フローリング・床材の暴れや突き上げの原因とその防ぎ方
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
インテリア、内装の中でも一番人目に付きやすい面積を占め、家具などと違い容易な交換がきかないのが「床材」です。それゆえ、極力床材に関するトラブルは回避しておきたいところですが、残念ながら高温多湿の日本ではそれに由来する種のトラブルが頻発しています。場合によっては全面交換が必要となり、その場合には何十万円の修繕費用が発生する、といった最悪のケースも想定されます。
さて、この床材にまつわるトラブルの中で特に発生率が高いのが「突き上げ・あばれ」のトラブルで、金銭的にも精神的にも多大なストレスを家主にかけることとなります。今回の記事では、この突き上げの原因と対処法についてまとめていきたいと思います。
目次
突き上げとは何か?
そもそも床材の突き上げとはどのような状況を指し示すのでしょうか?突き上げとは、床と床の継ぎ目が盛り上がる現象で、軽度な場合は手で触ってかろうじて判別できる程度ですが、重度になると目視ができ、床材自体に亀裂が生じるほどのゆがみに発展することもあります。木質フローリングの場合床鳴りなどと併発し、木質だけでなく後述の通り塩ビタイルの場合でも突き上げは発生します。
木質フローリングの突き上げ
木質系フローリングの突き上げに繋がる主たる要因は湿気や水分です。木材は元来、空気中の湿度を吸収し空気環境を整えるという機能を有していますが、この含水率が増えるにつれて木材は膨張し、特にフローリングのように周囲の板との隙間が無い場合など、行き場を失った木材による突き上げの原因になります。
ベニヤを組み合わせた複合フローリングよりも、一つの木材から切り出した無垢フローリングのほうが膨張の原因になりやすいなど、フローリングの中でも種類や長さによってその突き上げの程度は異なりますが、概して湿度・水にまつわる以下のような外的要因が特に問題を引き起こしやすいとされています。
- 空気中の湿度濃度が高い
- 床下から湿った空気があがってくる
- 水道管の破損等
- 水拭きなど、誤った床掃除
- こぼした水分を掃除せずに放置した
また、これらのような環境要因とは別に、接着剤・ビスの不具合による施工不良、クリアランスの不徹底などが原因でフローリングの突き上げに繋がることもあります。いずれにせよ、状態が軽度であれば乾燥時に自然に落ち着いたり、部分補修で済むこともありますが、下床コンディションのような根本的な問題であったり床材に破損が生じるほど大きな突き上げであったりすると、全面的な床の張替えが必要になります。
また、日本では流通量が少ないですが、基材にHDFを用いたラミネート床材も同様に湿度や水分に対する弱点を擁しており、同上の原因によって突き上げに繋がります。
塩ビタイルの突き上げ
湿気や水分に対しては100%に近い耐性を誇る塩ビタイルですが、こちらは木質フローリングとは違って「熱」によって膨張しやすい素材になります。樹種によって微差はあるものの、一般的な木材の線膨張係数は(単位はax10-6/℃)5前後であるのに対し、塩ビのそれは50~100と、大きな開きを持ちます(出典:engienering toolbox)
勿論、塩ビタイルも厚さやスペックによって様々な種類の製品が世に出回っており、一概に上記の数値を引用することはできませんが、一般論から、木材よりも熱に対する耐性は弱いと見られています。そのため、以下のような要因は塩ビタイルの突き上げに繋がります。
- 猛暑日による高気温
- 直射日光
- 暖房器具などによる直接の影響、等
特に、塩ビタイルの中で欧米発のクリック式と言われる、施工と解体を容易にした種のタイプは、日本でオーソドックスな塩ビ床と違い、接着剤を使わない、厚いという特性を持ち、それゆえ一層、熱膨張による突き上げ不良のトラブルに繋がりやすいと言われています。
もし突き上げが起きてしまったら?
まず、すでに起きてしまった突き上げに対する解決策について触れてみましょう。上述の通り、床材のフローリングは製品それ自体の問題というより、生活環境や気候条件に大きく依存する部分があり、突き上げの原因や規模もそれゆえ多岐に及びます。
一般的には、無垢フローリング、塩ビフロアなどのカテゴリを問わず、湿度や熱による「床材の膨張」が突き上げの原因としてはよく挙げられます。その場合、突き上げの規模が小さければ、突き上げの起きている余分な部分をカットすることで一時的には補修が可能なこともあります(※床材の種類や原因によっては補修ができないケースもあります)。注意すべきは、突き上げの起きた原因をしっかりと把握したうえで補修をおこなわないと再発することとなったり、取り返しのつかないこととなるため、基本的には施工業者の指示を仰ぐやり方が無難でしょう。
また、床材の特性として、ただ膨張するだけでなく、縮むこともあるため、一度カットしてしまうと、今度は乾燥時や冷却時の収縮が目立つようになってしまったりと、色々な弊害が生じてしまうかもしれません。突き上げがあまりに生活に支障をきたすようであれば、突き上げのおきづらい床材への全面張替えなどを検討してみる手もあります。一度起きてしまった突き上げを修復するのは困難なため、以下のように、突き上げの起きにくい状況を予め作り出す方向がコストパフォーマンスが良いと言えます。
突き上げに対する対処法
さて、一度起きてしまったら生活上のストレスになりかねない床材の突き上げ・あばれの問題ですが、これらを未然に防ぐにはどのような方法が効果的でしょうか。以下に3つの観点から、突き上げに対する予防法を紹介していきます。
施工環境の見直し
施工する前の話になりますが、床材の突き上げを防ぐにはそもそも施工に適した環境か、を今一度見直すことが重要です。例えば、新しく建てたばかりのモルタルは湿気を多く含み、床材を施工する前に、これらを外に逃すためのクールピリオドが必要になります。フローリングを施工する床下は、継続的な湿気に晒されていないか(土壌が湿気を多く含む)、配管に問題ないか、下床は清潔で安定しているか、直射日光の入る大きな窓などに面していないか、なども床を施工しようと思ったら特に気を付けておかなくてはいけない点です。
こうした下床条件が適さない場合、床の施工前にコンディションを整えたり、湿度を逃がす等の工夫を施すことも、施工に携わる人間の責任となります。また、環境が適していても、適切なクリアランスを取らないなどもその後の突き上げの原因となりますので、注意が必要です。
生活環境の見直し
突き上げに関して、製品自体のスペックや施工不良だけでなく、住む人の生活習慣なども大きな影響を与えます。例えば、水気が天敵のラミネート床や無垢フローリング床に対して水拭きをおこなったり、暖房器具や簡易暖炉を床の真上で直接用いたり、こぼれた水をそのままにしておいたりと、こうした要因は容易に突き上げを招きます。
物によっては長時間の直射日光と猛暑のコンビネーションにより膨張した後の突き上げを引き起こすケースもあるため、予め必要な箇所に日除の為にカーテンをかけるといった予防も肝要になります。
とは言え、どのような生活習慣が問題で突き上げを招くかは、床材の種類によって異なるため、施主側の経験が浅いと予防や対策がきちんとできているか分からないといったこともあるでしょう。
床の施工が終わった後にどのようなメンテナンスをすればよいのか、どのような習慣を避けなくてはいけないのかは、製品マニュアルを読んだり、施工業者に確認を行う必要があります。
製品自体の見直し
無垢フローリングには「自然の調湿効果」「自然のぬくもり」といった長所がある一方、やはり湿度や水気という弱点を持つことから、施工環境(断続的な湿気が見込まれる地域や土地)によってはそもそも木質フローリングを避けた製品選択も今一度考慮しなおす必要があります。
突き上げや暴れを予防する床材案として期待されているのが、ヨーロッパの床材市場において40%以上のシェアを誇るSPCフロアです。SPCは、水に弱いという木質フローリングと、熱に弱いという塩ビフロアの弱点を克服する目的で作られた新世代の床材です(ただし、熱に対して耐性があるというだけで、万能では無いという点に注意は必要)。また、クリック式を導入していることから、万が一不測の事態が発生しても、木質フローリングのような全面総取り換えを要するわけではなく、解体が容易で部分補修が可能となります。
このように、突き上げを起こしやすい「施工環境」「生活環境」「製品」のいずれかを避けることによって、世の中で起こりうる大半の突き上げトラブルは回避できることとなるでしょう。
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