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2022.7.26
フローリングの色選択が部屋のテイストに与える影響
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
インテリアは、空間のベースとなる床・壁・天井、家具などの調度品、電化製品などの設備機器、絵や置物などの装飾物、その他生活用品などのエレメントで構成されています。そしてそれぞれの構成物が持つ「色」「素材」「質感」、加えて照明が作り出す「光」が、インテリアのイメージを決定付ける4大要素であると言われます。
今回の記事では、4大要素の筆頭である「色」に注目し、空間ベースの要とも言える床材における影響を、実例を交えて紹介します。
目次
フローリングの色選択、知っておくべきポイント
部屋の中で最も大きな面積を占める床・壁・天井は、空間全体の方向性を決定付ける重要な要素です。それゆえ描いたイメージとの齟齬が生じないよう、色選びには十分な検討と慎重な選択が求められます。
インテリアにおける各要素の色配分は以下のように考えるとバランスが良いとされており、床面を含むベースカラーは部屋全体の7割程度の面積を占めることからも、その影響の大きさは明らかです。
- ベースカラー 部屋全体の60~70%程度(床、壁など)
- アソートカラー 部屋全体の25~30%程度(家具、カーテンなど)
- アクセントカラー 部屋全体の5~10%程度(小物類など)
色は「色相」「明度」「彩度」の三属性によって決まりますが、フローリング床の場合、木が持つ元来の色、すなわち色相は薄茶〜濃茶色をベースに、樹種により黄色味や赤味加わるという色展開が典型的です。さらに床面は、空間の大きな面積を占め、かつ変更が容易でないという性格上、どの調度品や装飾品とも合わせやすいベーシックカラーが好まれます。フローリング床の色相の幅は壁や天井に比べると狭く、それゆえ「明るさ(明度)」と「鮮やかさ(彩度)」がテイストを左右する重要な要素になります。
明度と彩度が生むイメージの違い
「木材のイメージに与える色彩および光沢の影響」(増田稔)によると、「木材色は赤味の材ほど明度が低く、黄色味の材ほど明度が高い傾向」があり、明度が高いと「明るい」「すっきりした」「美しい」「洋風な」印象を、明度が低いと「重厚な」「深味のある」「落ち着きのある」印象を与えることが調査結果として報告されています。また、彩度が高いと「派手な」「暖かい」イメージ、彩度が低いと「渋い」イメージが持たれるとしています。
空間設計に利用できる色の心理的効果
明度と彩度から来る印象の違いだけでなく、色は軽重や硬度などの物理的感覚にも影響します。これらの心理的効果をうまく利用すると、空間イメージを自由にコントロールすることができます。
色の軽重感を利用した例
「色の軽重感」とは、明るい色(明度の高い色)は軽く、暗い色(明度の低い色)は重く感じさせることができる心理的効果で、空間設計でよく利用されます。床・壁・天井に明るい色を使うと空間が広く見えて開放感が生まれ、暗い色を使うと空間が引き締まり重厚感が生まれるのはこの効果によるものです。
無彩色では白、有彩色(純色)では黄色・橙色の明度が高く、逆に黒や赤・青は低くなります。つまりフローリングで使われる色味の中では、白味や黄色味が強い色ほど軽く、赤味や黒味が強い色ほど重く感じられるのです。
色の硬度感を利用した例
明度が高い色ほど柔らかく、低い色ほど硬い印象を与えます。明度だけでなく色相も色の硬い・柔らかいに影響する要素で、暖色の方がやや柔らかく、寒色はやや硬いイメージになります。
床材はOak Studioline sandedで壁の色を変えた例:
色の膨張・収縮感を利用した例
物理的に同じ大きさの物体でも膨張色(明るい色)だと大きく、収縮色(暗い色)だと小さく見える効果があります。ファッション分野で着やせ効果を狙ってよく使われるテクニックですが、インテリアにおいても床や壁に明度の高い色を使うことで広がりのある空間を作ることができます。
床と壁に明度の低い色を使用
床と壁に明度の高い色を使用
色の進出・後退感を利用した例
暖色系や明度の高い色は「進出色」、寒色系や明度の低い色は「後退色」と呼ばれ、物理的距離は同じでも近くに見える・遠くに見える感覚を生む効果があります。床や壁・天井に後退色を使うことで空間に奥行きを持たせたり、逆に目立たせたい部分に進出色を使って目を引くことができます。例のように一番奥の壁だけに寒色を使って壁を遠くに見せるという手法は、この効果を利用した空間演出テクニックのひとつです。
床と壁に暖色系・明度の高い色を使用
床と壁に寒色系・明度の低い色を使用
節の出方やコントラストの影響
床面に使用するフローリング材の節の出方やコントラスト、床材を張る方向によっても空間のイメージは変わります。木目が強く出た(節やコントラストが多い)床材を使用した場合、「自然」で「味わい深い」印象を与えます。逆に木目が目立たない床材だと、「スッキリと」「上品な」イメージになります。
床材の向きは「長手」(部屋の辺が長い方)方向に張るのが一般的ですが、これは木目に沿って目線を部屋の奥に誘導することにより奥行き感を演出する狙いがあります。意図的に、あるいは設計上部分的に方向を変えることもありますが、基本的にはフローリング材の方向を合わせて住居全体の一体感を出すのが好ましいでしょう。
床と天井の関係性
床材を決める際に意外と見落としがちなのが、天井とのバランスです。守るべきルールは、床と天井を同じ明度にしない、つまり「どちらかに部屋の重心を置く」ことです。床も天井も重い(濃い)色にしてしまうと圧迫感が出てしまい、両方軽い(薄い)色だと空間が引きしまらずだらしない印象を与えてしまいます。
パターン1:明るい色の天井+濃い色のフローリング
重心が低くなるので天井が高く見え、抜け感が出ます。
パターン2:濃い色の天井+明るい色のフローリング
重心が上になり、空間に落ち着きが出ます。多少上部からの圧迫感が出るので、ベッドルームなど気持ちを鎮めて過ごしたいスペース向きです。
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