カタログダウンロード
下記項目にご入力のうえ、送信ください
2022.4.25
ドイツ大手床材メーカー、パラドー社の歴史とヒュルスグループとの関係
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
ドイツの大手床材メーカーであるパラドー社は、世界80ヵ国で床材を販売し、各国の商業デザイナーや建築家、ハウスオーナーに愛されています。本国ドイツでのブランド知名度は高く、ドイツでインテリア・内装を語るのであればパラドー社を欠かして語るのはできないと言われるほど。
今回の記事では、パラドー社の設立の経緯と元親会社であるヒュルスタ社との関連、その発展の歴史など会社の成り立ちについてお伝えしようと思います。
パラドー社(Parador)の起源と歴史
パラドー社の起源は前身である、独大手家具メーカーのHülsグループ(ヒュルスタ社)に遡ることができます。ヒュルスタ社は1940年、パラドー社が本社を構えるコースフェルド(独)のお隣の町、シュタットローン(独)で設立され、その後80年近く本拠地を保ち続けています。
コースフェルド、シュタットローンという町は人口2~3万人程度のドイツ中世の模範的職人都市で、ハンザ同盟の中核に数えられる経済都市ミュンスターの発展に伴って成長を遂げました。ドイツの中でも西寄りのこれらミュンスター経済圏は、オランダやベルギーへ車で1~2時間で移動できる貿易上の好立地として、中世時代からドイツの商業利権の中核を担ってきたわけです。
こうした貿易、経済の中心都市から少し離れた土地に職人町を設けることはドイツ中世経済の典型的なスキームで、そうした職人文化の残る小都市に、のちにドイツを代表する家具メーカーとなるヒュルスタ社が誕生したことは、ある意味自然の流れとも言えるでしょう。ヒュルスタ社は、ドイツの国樹であるオークの扱いに長け、設立以来世界中に高品質な家具を送り出してきました。
パラドー社は、そうした由緒あるヒュルスタ社の床材部門として、1977年に分離独立する形で誕生。設立当初は、木材の扱いに長けたヒュルスタ社の職人の一部がパラドー社に移籍したということで、前身から脈々と続くドイツの職人魂がパラドー社にも受け継がれていることとなります。パラドー社の社員によると、つい最近になって40年近く在籍していた、パラドー社設立時メンバーの最後の職人が定年退職したとのことです。
ドイツ随一の床材メーカーへ
1977年の独立以降、パラドー社は前身のポートフォリオである木質床材だけでなく、当時は画期的であったラミネート床材や、のちに「デザインフローリング」と言われる塩ビ系床(後のSPC床材)の開発にも着手します。
パラドー社が他の欧米床材メーカーと比較して有利だったのは、土地柄、木材の扱いに優れた職人肌の社員を多く抱え、かつ大都市のような社員の離職に悩まされることが無かった点です。地元、コースフェルドで育った職人たちは、パラドー社の提供する職人育成訓練を若いころに研修し、やがて正社員として採用、退職まで勤め上げる、というドイツでは珍しい半終身雇用体質が生まれつつありました。
社員の離職率の低さは、知識やスキル、暗黙知の社内への集積に直結します。1977年以降40年近く(前身の時代を含めると80年)、さながら苗木がオークの大樹に育つようにじっくりと時間をかけ社内の知識は成熟されていき、21世紀に入るころには、ドイツはおろかヨーロッパでも真似できる会社の無い「プロシア流の職人美学と近代ドイツ流の最新技術」を併せ持った企業としての地位を固めつつあったのです。
パラドー社の強み
上述のような経緯から、パラドー社は本来の生業であった「木質」へのこだわりと敬意を忘れていません。生活動態の変化によって、かつてのような無垢フローリングから徐々に市場のトレンドが塩ビ、ラミネートのような新素材床材に移ろいゆくなかでも、パラドー社の根幹にあるものは「本物の木材と同等」の外観と手触りを備えた床材の開発です。
幸いにも前身を含め80年の歴史を持つパラドー社内には、これを可能にする知識とスキルが集約されていました。すなわち、木材の加工・研磨・施工に長けた職人チーム、世界各国の著名デザイナーとともに唯一無二の床材を生み出してきたデザインチーム、彼らのおこした芸術的なデザインを寸分狂わず素材上に展開する工学技術チーム、といった複雑なチームプレイがあって初めて、世界でも類を見ない意匠性に長けたパラドー社の製品が世に出ているのです。
国立競技場の設計で一躍日本でも有名になった故ザハ・ハディッド女史や、イラン系ドイツ人デザイナーとして世界的に著名なハディ・テヘラーニ氏、自動車から家具・建築まで世界のデザインシーンを牽引する一人者アルフレッド・ハベリ氏など、世界の著名デザイナーとのコラボレーションは、パラドー社のブランド力がデザイン界隈で認められている証左でもあります。
こうした巨匠とのコラボ製品を世に送り出す一方で、「貴方の住まいを世界で最も美しく(Für das schönste Zuhause der Welt)」のスローガンのもと、家庭用の床材の開発を行い続けてきました。Good Design Award、Iconic Award、German Design Award等、それゆえデザインに関わる賞を毎年のように受賞するのも、ひとえに他社との差別化のために特に「デザイン」に注力してきたためです。
むろん、デザインだけではなく、製品の耐久性、機能性といった部分もパラドー社の得意とする領域です。世界有数の厳しいドイツの認証試験以外にも、自社性能試験施設を保有し、研磨、摩耗、衝撃テスト、耐水性テスト、といった自主テストを実施し、製品性能の不断の向上に努めています。
- 世界最高基準のドイツ技術の運用
- 中世のハンザ都市の伝統を汲む職人魂と品質へのストイックなまでのこだわり
- 厳格で知られるドイツ・EU認証を上回る厳しさでの自社試験
- デザインに関する社内暗黙知の集積と世界的巨匠とのコラボレーション
こうした点が一般的にパラドー社の強みとして知られており、ドイツ市場においては「ドイツで最もブランド価値の高い床材メーカー」としてドイツの大手新聞社Welt紙の最高の格付けをうけています。 2022年現在、設立から45年目を迎えるパラドー社は世界80ヵ国に床材を販売、売上高では250億円程度を誇るドイツ有数の大手床材メーカーとして成長を遂げました。時代の流れとともに新たなトレンドを作り続ける一方で、ドイツ・オーストリア生産という根幹はくずさず、また自社の強みである研究施設をドイツ国内に抱えています。
PICKUP STORY