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2022.3.15
ドイツの床材市場:SPCフロア台頭の背景と4大床材カテゴリについて
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
バウハウスやスタイリッシュなリビングデザインなどで知られるドイツのインテリアですが、その内装に使われているドイツの建材・材料などに関して日本ではあまり知る機会がありません。
建材の中でも特に重要な床材に目を向けてみると、ドイツでは4大床材カテゴリがマーケットシェアの9割を占め、これら4つの床材がそれぞれの長所に応じた場所に施工されている形になっています。ドイツ風インテリアや建築を知るうえで欠かせない、ドイツの床材について見ていきましょう。
4つ巴のドイツ床材事情
年間2億5000万㎡の欧州有数の床材市場を持つドイツですが、実情を紐解くと、一部の例外的な商業施設や病院を除けば、以下の床材の4つ巴となっていることが分かります(今回は住宅には使われにくいタイルを除外する)。
- 塩ビ系床(SPC含む)
- カーペット
- ラミネート床
- 木質フローリング
規模として支配的なのはカーペットで、1億㎡という全体の4割のマーケットシェアを誇ります。次いで、ラミネート5500万㎡、塩ビ・SPC床5000万㎡、木質フローリング1900万㎡と続く形になります。 一方で、売上高に目を向けてみると、この順位が入れ替わります。支配的なのは塩ビ・SPC床で、カーペットとラミネートのそれぞれの2倍近い年間売上高を持ちます。これには㎡辺りの単価が影響しており、高品質・デザイン重視の塩ビ・SPC床や木質フローリングはカーペットやラミネートよりも㎡辺りの単価が基本的に高く、それゆえ総売り上げでみると逆転現象が起こるのです。
2013年からの売上推移にも表れるように、今までヨーロッパで優勢であったラミネート床材が、耐水性の問題や健康意識の変化などから徐々に使われにくくなってきており、代わって塩ビ・SPC由来の床材の売り上げが年々増加傾向にあります。
カーペット
ドイツ語でカーペットはTeppich(テピヒ)ですが、どちらかというと日本のラグに近いようなニュアンスになるため、統計データなどで使われる施工用のタイルカーペットは、Textilbeläge(テキスティルベレーゲ)やTeppichboden(テピヒボーデン)といった用語で呼ばれることもあります。
安価であり、後から傷んでも取り外しやすく、柔らかな肌触りであることから、特に寝室や子供部屋で使われることが多かったですが、最近ではその他の床材にその用途を奪われがちです。また、住宅以外でも防音効果などからオフィスでの使用されることがあります。
塩ビ・SPC床材
ドイツの床材市場で最も大きな売上高を誇る塩ビ・SPC床材は、耐水性・耐久性・耐汚性に優れることからオールラウンダーとして住宅・商業施設を問わず広く使用されています。
木質フローリングの施工には適さない水回りや脱衣所といった部分にも問題なく施工できるため、統一感を持たせるために家中すべての床材を塩ビ・SPCフロアにする人も少なくありません。
(塩ビ床・SPCフロアの違い、特徴に関しては「【塩ビ床の歴史】SPC床材の登場で塩ビ床市場はどう変わったか」を参照してください)
ドイツの床材市場において長年王者として君臨してきたラミネートフロアが後述の通りマーケットシェアを落としているのに対して、塩ビ・SPCフロアは年々売上を伸ばす傾向にあります。
木質床など、発展可能性に限界のある他床材と違い、塩ビ・SPCフロアは新たな材料、新たな加工方法でのリノベーションがしやすく、顧客のニーズに沿いやすい事、ドイツ人の十八番である化学分野の製品であることから、今後もドイツで着実にマーケットシェアを増やしていくものと思われます。
ラミネート床材
価格面で優位性を持つラミネート床材は、オールラウンダーとして家中のいたるところで使用されてきました。特に、表面が頑強であることは土足文化のドイツには大きなメリットで、20世紀前半まではドイツを含む西欧の床材マーケットで支配的な地位を築いてきましたが、以下の図からも読み取れる通り、耐水性に優れる塩ビ系・SPC床材の進化から、年々マーケット規模を縮小していっています。
Bundesverwand Großhandel Heim & Farbeを元に作成
「海外で人気のラミネートフロアが日本で流行らない致命的な原因とは?」の記事で触れた通り、HDFを基盤にする耐水性の問題もさることながら、日本市場ではエフ・フォースター取得の問題などもあり、ほとんど進出していません。
欧米大手ラミネートメーカーの生産工場が次第に中国や東南アジアに拠点を移し、安価な床材というイメージがついてしまったため、エンドユーザーの興味が他の床材にシフトしている状況です。
木質フローリング
木質フローリングはドイツの床材市場の中でも特殊な立ち位置にあります。タイムレスな製品カテゴリとして、流行り・廃りに影響されることなく、毎年安定したマーケットシェアを維持し続けています。
ドイツの木質フローリングは表面の挽板が基本的に2㎜以上のものであり、破損時にもサイディングなどで再度使用することができる、本来の木の手触り・肌触りを楽しめる、調湿効果に優れている、などが、根強いファンを持つ理由でしょうか。
特に、客人を招く住宅の「顔」とも呼べるべきリビングルームへの施工や、温かみを感じるために寝室や子供部屋への使用が人気です。
一方で、値段的に高価であること(平米辺りカーペットの約4倍)、耐水性が弱点である、ということから、家のすべての部分に木質フローリングを使用する、というケースは稀で、特に湿度の高い脱衣所、水や汚れに晒されやすいキッチン・水回りへの使用は敬遠されがちです。
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