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2025.1.3
SPCフローリングの登場で塩ビ床市場はどう変わったか
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
2010年代後半に登場したSPCフローリングは既存の塩ビ床市場を席巻し、他の床材カテゴリが停滞気味な2020年代においても着実に世界でのシェアを伸ばしつつあります。
耐水性、耐熱性、耐久性という今までの床材にない3つの強みを持つSPCフローリングですが、その前身ともいえる塩ビシートやクリック式塩ビ床の長所を引き継ぎ、難点を解消する形で開発されたわけです。
本稿では、大手デベロッパーや設計事務所も使用し、市場に浸透しつつあるSPCフローリングの登場の背景と特徴について詳細にまとめていきたいと思います。
目次
塩ビ系床材の歴史:塩ビシートの登場
日本の塩ビ床市場は年間約3,000万㎡程度といわれており、サンゲツ、タジマ、東リの大手3社でマーケットシェアの大半を占めている状況です。塩ビ床とは、LVTやSPCなどPVCを原料とする床材の総称で、実際にはいくつかのカテゴリに分類されます。
世代① ドライバック
厚さ: 2.00~3.00㎜
特徴: 水に強いが耐久に乏しい
材料: PVC
価格帯: 4000~5000円/m2
施工: ノリ

世代② LVTクリック
厚さ: 4.00㎜~6.00㎜
特徴: 水に強いが熱に弱い
材料: PVC
価格帯: 6000~8000円/m2
施工: クリック

世代➂ SPCフローリング
厚さ: 5.00㎜~7.00㎜
特徴: 水に強く、耐久と耐熱を備える
材料: SPC(PVC+石灰石)
価格帯: 8000~10000円/m2
施工: クリック

日本で「塩ビ床」というと一般的に2.5㎜厚~3.0㎜厚の、接着剤で下床に直接施工するものを指しますが、世界に目を向けるとこのタイプの塩ビ床はDry-Back(以下、塩ビシート)という世代の古いもので、欧米先進諸国各国では一部の商業施設などへの施工を除き用途が限られつつあります。
元々、湿度に強く耐久性があるという触れ込みで生産・販売が始められた世界のビニル系の床材のうち、最初期に登場した形のものが日本で主流となっている薄手の「塩ビシート」です。
当初は日本や欧米先進国で製造されていたものが、次第に中国や東南アジアの工場に外注・生産工場の設置という典型的な製品のライフプロセスを経て、次第に安価なものへと変わっていきました。
元来、欧米諸国の不動産業界は日本のように家主が一生涯住むことを前提とした 「新築市場」ではなく、中古の物件を転がす “中古市場” です。前の家主から家を買い、内装をリフォームして50年、100年と同じ家屋に住むことが一般的である欧米諸国にとっては、接着剤で床に貼って張替えが大変な塩ビシートの代わりとなる、リノベ向きの建材が求められていました。

そのような背景で、欧米の主流床材は下床に接着するタイプの塩ビシートから、下床の上に固定せずにひくだけでいつでも脱着可能な「クリック式塩ビ床」というものに移っていくわけです。
塩ビ床の内部にクリック式というギミック構造を導入するため、旧来の塩ビシートと比べると全体の厚みが増したことが特徴です。そのため、価格帯も旧来の塩ビシートより高くなりました。
上述のように、リノベ向き需要にぴったりと嵌ったこともあり、この「塩ビシート」→「クリック式塩ビ床」への移行は欧米諸国ではスムーズに行われました。パラドーを含む大手床材メーカーはこぞってクリック式塩ビ床を製造、販売し、世界の主流は完全に脱着可能なクリック式塩ビ床にとってかわられたのです。
第二世代:クリック式LVT床の問題点
建材業界、特に欧米の建材需要を牽引するDIYチェーンからは熱狂をもって受け入れられたこの「クリック式塩ビ床」ですが、今までの「塩ビシート」には無かったいくつかの問題点をはらんでいました。また、このことが結果として日本市場で「クリック式塩ビ床」が失敗した要因にもなります。
第一に、「クリック式塩ビ床」は接着剤を使用しなくて済む代わりに、壁と床との間に大きなクリアランスを要することが挙げられます。内部にクリック構造を内蔵するため、既存の塩ビ由来の「塩ビシート」を厚くした弊害として、熱での膨張に非常に弱い作りとなってしまったのです。
夏場の猛暑で線路が膨張したニュースなどを見たことがあるかもしれませんが、それと同じ原理で、塩ビ由来の床材は熱や直射日光で膨張します。その際、壁との間にクリアランスが無いと突き上げを起こし、一度おきた突き上げは元に戻らないという危険性を秘めていました。
クリアランスを取らない旧来の「塩ビシート」の施工に慣れた大工さんや内装工事屋さんで、このトラブルが相次ぎ、結果として「クリック式塩ビ床は使いづらい」というイメージが浸透したのです。
第二に、「塩ビシート」と違って厚いボートのような形状になったため、下床に不陸があるとそれをそのまま拾ってしまい、施工後に床鳴りやクリックが外れてしまうという問題を生じさせる事例が多発しました。

こうして、欧米で人気を得たとはいえ施工上の諸問題をはらんでいた「クリック式塩ビ床」は、ある時点で売り上げが伸び悩むこととなりました。「塩ビシート」と同じく、「クリック式塩ビ床」の生産拠点も元の欧米から世界の工場である中国に移っていき、過当競争化したことで、メーカーもだんだんと利益を上げづらくなっていきます。そうした折に、新しく登場したのが「SPCフローリング」です。
第三世代:SPCフローリングの登場と今後の展望
SPCとは、Stone Plastic Compositeの頭文字の略で、端的にいうと耐久性に優れた石灰石を多く含んだ塩ビ床のことです。上述の通り、熱による膨張等の施工上の悩みを抱えていた「クリック式塩ビ床」に代わって欧米メーカーが新しく開発した塩ビ床で、従来のクリック式塩ビ床と比較すると数倍の対熱安定性を持つようになりました。

また、不陸の問題に関しても、床材の下にクッションシートを装着することで、旧来の塩ビ床の施工上の難点を大幅に解消するに至りました。
床材の比較表
床材種類 | 耐水性 | 耐熱性 | 耐久性 |
---|---|---|---|
塩ビシート | 〇 | ||
LVTクリック | 〇 | 〇 | |
SPCフローリング | 〇 | 〇 | 〇 |
無垢フローリング | 〇 | ||
ラミネート床材 | 〇 | 〇 |