床材の知識

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    2022.1.24

    ドイツ製の床材はなぜリノベーション向きなのか?

    監修

    インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏

    海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。

    貿易の比較優位論によると、その国の持つ地理的・文化的な差異は、経営学上で大きなアドバンテージとなります。地震の多発する日本で「耐震性」の家屋が発展し、世界各国にそのノウハウが持ち込まれるようになったのも、ある種日本の地理的な差異を元にした経営戦略の一つでしょう。

    その他、世界各国の建築材料に目を向けると、その国の風土や文化、宗教の歴史を色濃く投影していることに気が付きます。日照時間の乏しい北欧で開放的な窓が発展し、冬の寒さの厳しい欧州で機密性の高いドアが開発され、高温多湿で洪水の多い東南アジアでタイル床が主流なのも、またそれら地理的・文化的な要因によるものです。

    同様の見地から、「リノベーション向きの床材」に目を向けてみると、ドイツを含む欧米諸国が文化的に大きなアドバンテージを持つこと、そして日本が不利であることが紐解けます。今回の記事では、なぜドイツの床材がリノベーション向けなのか、文化的な背景を元に説明していきます。

    日本のリノベーション向き床材について

    様々なシンクタンクや官公庁の調べを借りると、日本の人口は頭打ちである以上、今後数十年新築住宅の着工数は落ち込んでいくことが予想されています。対して、既存の住宅や空き家をリノベーションし、賃貸するようないわゆる「中古物件のリノベ需要」というのは向こう十数年安定した市場を形成するとされており、国内の各メーカーも次第にプロ向け建材から「中古リノベ向け建材」に路線を変更し始めました。

    代表的な所でいうと、東リの「ゆかペタ」、サンゲツの「リフォルタ」、パナソニックの「ウスイータ」などでしょうか。業者向けだけでなく、ホームセンターの床材コーナーなども見渡すと、国内外の「リノベ用床材」を探せるような環境が徐々に整いつつあります。

    複合フローリング、塩ビ系、タイル系、カーペット系など、種類は多様なれど、日本で現在出回っているリノベ向けと呼ばれる床材は具体的に以下のような特徴を持ちます。

    日本におけるリノベーション床の特徴

    • 既存床の上にも施工ができる
    • 原状復帰できるよう、将来的な取り外しを想定している
    • 釘や糊などを使用しない
    • 大掛かりな仕掛けや組み立てを要しない

    元々、日本の床材は新築物件向けに、捨て貼り用の組み立てを要したり、強度を保つために釘や糊で頑強に固定することが旧来の習わしでした。上述のようなリノベ需要の高まりから、次第にそういった複雑な工法や準備を要さずとも施工できる床材が市場に出回り始めた、というわけです。

    最も、長いこと新築市場向けの建材に注力してきた日本の建材界にとって、リノベ向け建材の開発は手探り状態のようです。様々な製品が市場に登場しては姿を消す、ということを繰り返し、まだ「大ヒット」と呼べる製品が登場するに至りません。

    ドイツ製の床材がリノベーション向きである文化的背景

    対して、ドイツで出回る床材のほとんどは、リノベ向きの仕様で、これが市場全体のメインストリームとなっています。国内だけでなく、世界中の建材需要を牽引するのも欧米の建材メーカーか、そこからの技術を借用した中国メーカーとなっており、この分野で日本のメーカーは海外市場でほとんど太刀打ちできていません。

    こと「リノベ向け建材」にテーマを限ると、日本よりもドイツや西欧諸国のメーカーのほうに歴史的・文化的な軍配が上がるでしょう。ドイツに本社を持つパラドー社も、現在は世界80ヵ国に輸出する国際企業に発展したとはいえ、その原点はドイツ市場にあり、ドイツのリノベ文化を根強く踏襲しています。

    リノベ床の代表的な特徴としては「クリック式」による着脱可能な床材文化です。既存の床の上から、模様替え気分で床を載せたり、また退去時にすぐに取り外せるという、リノベーションに最適の特徴を持ちます。似たようなコンセプトの製品は日本でも開発されているものの、市場構造を変えるような製品の開発には至らず、現状、日本市場で見かけるクリック式床材のほとんどが海外からの輸入品となっています。

    独パラドー社クンストヴェルクコレクションのクリック施工解説

    最もこれは、日独メーカーの技術力の問題ではなく、その国の建築や住宅市場に根差した問題であるため、どちらの国が技術的に優っている/劣っているという話ではありません。

    それでは、なぜドイツでこのようなリノベ向きの床材が発展し、世界各国に輸出できるほどの優位性を持つのでしょうか?以下に、理由を交え解説をおこないます。

    新築ではなく中古物件文化

    日本の建材がリノベではなく新築物件に特化した発展を遂げ、ドイツを含む欧米諸国では中古物件用のリノベ建材が進化した理由として、第一に、それぞれの国の住宅事情が挙げられます。

    台風や地震災害の少ない欧米では、築50年、100年という中古物件はザラにあり、自国が過去100年で戦場になったことのないアメリカでは全体の物件の4割が「築100年以上」、一度国土が焦土化したドイツであっても約1割が「築100年以上」です。

    一方で、総務省「住宅・土地統計調査」によると築50年以上の住宅は全体の15,6%となっており(ただし、バリアフリーの調査のため「高齢者の住む家」という条件付きであり、人の住まない空き家の数を含むとその数は増える)、欧米諸国と比較するとその違いが顕著です。

    築年数アメリカドイツ日本
    築100年以上38,4%9,1%不明
    築50年~100年95,1%44,6%15,6%

    この、築年数の違いは、各国の住宅市場事情にも大きな影響を及ぼしています。例えば、ドイツでは市場に出回る物件の7割が「中古物件」であり、逆に日本では中古物件の割合はわずか14.7%です。

    結果として、ドイツや欧米諸国のように中古物件の転売が住宅市場の目玉となるような国では、自然、新築向きではなくリノベ向きの建材が流行ることとなり、次の家主が外しやすいように、クリック式の床材が浸透するようになりました。

    対して日本のように新築文化で、家主が一生涯同じ家に住むことを前提とした文化であると新築向けの建材が市場ニーズにあっていることになります。そのため、施工時にわざわざ「外すとき」のことをあまり考慮せず、むしろ家主がその住み続ける限りで支障をきたさないよう釘や接着剤で頑強に固定します。

    もっとも、人口の頭打ちによって、今後この日本の新築市場神話は長く続かない予想が多方面からなされており、遅かれ早かれ、日本も欧米式の「中古物件リノベーション式」の建材市場に切り替わっていくかもしれません。

    ドイツ発リノベに最適な床材「クンストヴェルクコレクション」

    国民が日曜大工気質

    ドイツのDIY市場は6.5兆円で、日本よりも人口が低いにも関わらず日本のホームセンター市場の4~5兆円を上回ります。また、ドイツのDIYセンターの売上は日本のホームセンターのような食品、ペット用品などを基本的に含まず、純粋な「日曜大工」としての売上です。ドイツの人口は8,000万人、すなわち人口一人当たりDIY日曜大工に年間10万円近く費やすと考えると、中々に驚きな数値ではないでしょうか。

    特筆すべきは、ドイツや西欧、北米のDIYセンターではプロが使用するイメージの専門的な工具が素人向けに売られ、まさにそこらへんのお父さんたちが「日曜大工」で車を直したり、棚を設置したり、床を施工したりします。

    ドイツでは日曜大工が盛ん

    この、市場全体の流れが「建材はプロの専売特許」から「日曜大工で手軽に施工」に移っていった西欧・北米では、上述の中古物件のリノベ需要と絡め、結果としてリノベ向きに施工のしやすい建材、あるいは失敗しても取り外しができる、クリック式の床材の売上が過去十数年で大幅に向上しました。

    ちなみに、ドイツの女性へのアンケートでは、魅力的だと思う男性の趣味の4位に「日曜大工ができること」がランクインしており、頼れる男性の代名詞としてもDIYはドイツで市民権を得ているようです。

    模様替えを楽しむ

    統計的なデータこそないものの、一般的にドイツにおける床材の交換周期は「10年程度」と言われています。耐用年数や耐久性の問題というよりも、上述の通り脱着が容易であること、模様替えを楽しみたいこと、入退去に伴う原状復帰、結婚・出産による家族構成の変化、などの理由がメインに挙げられます。

    インテリアデザインの原則に則ると、壁や床のように面積の大きな部分は色彩のコーディネートの際に大きな影響力を持ちます。仮に、一度床を「明るい灰色」で統一すると、家具や照明に使える色も似た色相に限定されてしまうため、模様替えの幅があまり広がりません。

    「重厚で落ち着きのある暖色」「北欧インテリアのような淡いパイン色」といった、床材を起点とした部屋全体のトーンの変化は、コロナでリモートワークの多くなったドイツで特に人気を博すようになりました。

    上述の「中古物件市場であること」「日曜大工気質であること」「頻繁な模様替えが好きであること」を主な主な牽引要因として、ドイツの建材市場は成長してきました。ゆえに、その市場で出回る床材も、おのずとリノベ向きの「施工が容易で着脱可能な」ものである特徴を発展させるに至ったのです。

    ドイツ発リノベに最適な床材「クンストヴェルクコレクション」

    【参考文献】

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