床材の知識

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    2022.4.13

    知育教育に重要な子供部屋インテリアの役割

    監修

    インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏

    海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。

    まだ馬車と車が道路を分け合って走りあっていた、ちょうど産業革命の黎明期ともいえる18世紀、「子供部屋」という概念がヨーロッパで誕生しました。子供の発育の空間として子供部屋は独自の発展を遂げ、それと同時に知育玩具、情操教育、といった用語が浸透していくこととなります。

    さて、こうした本来の意味での「子供部屋」、すなわち子供の知的発育を促進する空間として、我々はどのようなインテリアを目指したらよいのでしょうか?知育と子供部屋の歴史、そしてインテリアというテーマにスポットを当てて、解説を行いたいと思います。

    「子供部屋」の歴史と知育について

    子供部屋インテリアのお話を始める前に、少し「子供部屋」が誕生した歴史的経緯についての説明を加えたいと思います。そもそも、子供部屋の主人公である「子供」とは中世以降発展した概念で、フランスの歴史家、フィリップ・アリエスはその著書「子供の誕生」の中で「“子供“という概念は中世から近世に移行する際に概念化された、その以前には存在しなかった」ものであると説明しています。

    子供は当時、我々の現在社会で考えるような「子供」として大事に扱われていたわけではなく、ミニチュアの大人としてぞんざいな扱いを受け、乳児死亡率も極めて高かったとか。かつて、親と子の関係は「愛と絆」で結ばれていたわけではなく、もっと機械的に、冷淡に、生産の手段という枠組みをとらえていた、という彼の主張は、当時の学会に大きな反響をもたらしました。

    やがて、産業革命、工業的・資本主義的システムへの歴史の変容の中で、社会の中に組み込まれていた「個人」という最小単位が、「家族」という単位の元に明確化されてくるとともに、父親、母親、子供、というそれぞれの役割も現代風の輪郭を帯びてくるものとなります。

    特に工業化の発展は、外で働く父親と家庭を守る母親、という現代に通じる「家族像」の原型を形作りました。プライベートの空間の中心に母と子、が据え置かれ、やがて「家族」という概念が社会に浸透すると、次第に「子供」「子供らしさ」「子供の教育」といった部分に人々の興味が向けられ始めるのです。

    「子供のための消費」が一つのコンテンツと化すと、次の社会の関心ごとは「どのように子供の教育に良いものを揃えられるのだろう」という点にうつります。18世紀~19世紀にかけて、児童心理学、発達心理学の研究と並行し、知育玩具(レゴやジグソーパズル)であったり、子供たちに「安全」な食器や食事、空間づくりやぬいぐるみなどが盛んに取り上げられるようになりました。以下のような子供用のおもちゃや知育玩具、子供向けグッズがヨーロッパ発なのも、ひとえにこうした歴史的背景があるからです。

    • テディベア(ドイツ)
    • トイピアノ(ドイツ/アメリカ)
    • レゴ(デンマーク)
    • ジグソーパズル(イギリス)
    • 積み木玩具(ドイツ)
    • ベビーカー(イギリス)
    • おしゃぶり(アメリカ)

    「遊びと人間」の中でフランス人哲学者のロジェ・カイヨワのいうように、遊びを通じて人間は概念世界を発展させ、想像力、ひいては社会的規範の源泉を得る糧とします。ボードゲーム、人形遊び、おままごと、一見して子供の単純な遊びに思えるこれらの行為の背景には、既に複雑な機構の絡み合ったシステムや概念を理解するための土壌づくりがなされているのです。

    子供部屋に適したインテリア

    前置きが長くなりましたが、西洋の歴史に答えを求めるとすると、「子供部屋」とは子供達が安全に知的創造力を養うための場所、です。「安全であること」と「知的創造力を養う」ということを両立させるため、玩具、インテリア、寝具、などこれらの細やかな配置・配色・素材には大人たちが気を配りながら改良を重ねてきました。

    現代のトレンドを付け加えていうなれば、そこに「頑丈であること」や「メンテナンスしやすいこと」も子供部屋のインテリアを誂える上での条件に含まれるでしょう。子供部屋に破れやすい障子をひいたり、高級な絵画を置いたり、というのは中々考えにくいと思います。

    • 子供が安全に「遊べる」場所であること
    • 知的創造力を養える環境であること
    • 頑丈で壊れにくいこと
    • 汚れてもメンテナンスしやすい事

    こういった条件を念頭に置くことが、子供部屋インテリア作りにおいて重要であるとされます。以下、子供部屋のインテリアづくりに際してチェックしていきたいそれぞれのポイントに関して詳しい解説を行います。

    安全であること

    安全であること、も様々なとらえ方があります。特に、なんでも口に入れてしまう傾向にある乳幼児にとって、部屋に使われている素材が無害であることは最重要課題です。自然由来の素材であるから無害である、という考え方は危険があり、木質のものであっても、防腐剤を使用したり、有害物質を発する塗料や接着剤を使用している可能性があります。

    • メーカーの出所がはっきりとしている商品
    • 仕様書・データシートが取り寄せられる商品

    特に、ドイツやスイスをはじめとするヨーロッパの建材・インテリアのブランドは、こうした子供達への健康、ということを考えた建材・インテリアづくりに早くから取り組んでおり、世界でも特に厳格な試験基準で知られています。

    テディベアの写真

    汚れにくい・メンテナンスしやすい・耐久性がある

    上述の通り、子供の知育・情操教育にとって「遊び」は大きな影響力を持ちます。絵具や色鉛筆を使った塗り絵、床の上を転がる車のおもちゃ、外で泥だらけになって帰ってくる夕暮れ時・・・と子供達の日常を少し想像しただけで、いかに子供部屋が汚れやすく、壊れやすいか目に浮かぶと思います。

    子供たちの発達の機会である「遊び」を妨げることなく、思う存分遊んでほしいところですが、その際には子供部屋のインテリアは汚れにくい、壊れにくい、汚れてもメンテナンスしやすい、という素材が求められます。

    関連記事:【耐水・耐熱・耐久性】SPCフロアのメリット・デメリットを徹底解説

    ドイツの子供部屋

    デザインは子供によって異なる

    子供部屋には「こうしたデザインが良い」という画一的な決まりごとは無く、子供の趣味・嗜好・発育年齢に合わせたソリューションが望ましいとされています。子供の趣味もまちまちで、研究結果によっては、ちょうど明るい色と暗い色を好む子供の割合は半々くらいだとか。

    子供にとって「安心できる」場所であるためには、ストレスを抱えるような空間ではなく、自分の好みの、いつでも落ち着ける空間であってほしいものです。そのためには、親の好みや流行りのデザインを押し付けるのではなく、子供と一緒にインテリアを考える、というスタイルが望ましいでしょう。

    最も、幼少期から小学校低学年までの子供は情感教育上最も多感な時期でもあり、この時期に見聞きした内容は、大人になってからも自身の血となり肉となることが少なくありません。こうした重要な時期を過ごす時期のため、美的なセンスを研ぎ澄ませる「美しいものに対する理解」を進ませておくのは理に適うでしょう。

    そういった意味で、インテリアの原則である配色のメソッド(同一トーン、類似色相、など)を応用し、子供部屋のインテリア空間を作り上げることは良い子供部屋作りの第一歩です。使われる壁材、床材など、子供が毎日目にする部分にも、やはり木目や柄の美しさを感じ取れる素材を使いたいところです。

    子供部屋の例

    将来的な模様替えが可能

    子供部屋のインテリアは、子供の発育や家庭環境に応じて大きく変化します。当初女の子1人だった子供に弟が生まれたり、体が大きくなるとともに家具やベッドの大きさが変わったり、子供の趣味がヒーローものを卒業してシンプルなインテリアを求めたり、子供が独り立ちしたら貸し部屋にしたり夫婦の書斎に変わったりと、子供の年齢によってその使い道は様々です。場合によっては激しい遊びや汚れなどで早めに壁や床をリフォームしなくてはいけないケースも出てくるかもしれません。

    そうした際に逐一、大掛かりな修繕や改築を必要とするのであれば予算的にも手間としても家族への負担が大きく、あまり現実的ではありません。また、借家で、原状復帰が必要となるような家の場合でも同様で、極力後々の処理が面倒になるようなインテリア選びは避けたいところです。組み立て式の家具や床材、後から塗りなおせる壁など、子供部屋には重宝される素材でしょう。

    「這えば立て立てば歩めの親心」とはよく言ったもので、子供の成長は親にとって嬉しい事。一方で、少し前まではいはいしていた赤ん坊が、いつの間にか幼稚園を卒業し、小学校を卒業し、いつの間にか自分の手を離れ独り立ちしていく日がいずれ来ることを想定しなくてはいけないのは、少し寂しくありますね。

    【参考文献】

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