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2022.8.11
【欧風リノベーション読本】それぞれの部屋に適した床材について
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
ひとえに欧風リノベーションといっても、力を入れるべきポイントは千差万別でしょう。ドイツ流のパッシブハウスのコンセプトを取り入れるのであれば「気密性」がポイントになってきますし、北欧風のインテリアを実現させるのであれば色使いと素材選びは譲れません。こうした家に応じたリノベーションプランというものは、設計士さんや内装屋さんとじっくりと話し合いながら終着点を見極める共同作業です。
とは言え、欧風リノベーションを個人の力で行うことも不可能ではありません。巷にはDIY関連の部材も情報も出揃っていますし、インスタグラムやユーチューブを見れば施工方法まで詳しく説明されている時代です。
素材別に、欧風リノベーションの中で床材部分に注目するのであれば、欧米で多く使用される頻度は上記の表の通りになります(最も、日本の複合フローリングと欧米の複合フローリングは定義が異なるので注意が必要)。今回の記事では、家の各部屋をリノベーションする際に、具体的にどのようなポイントに注意が必要で、どのような床材がオススメなのかについて解説を行いたいと思います。
玄関、廊下
欧米の習慣として土足文化を思い浮かべることがあると思いますが、実際にはエントランス部分で靴を脱ぎ、スリッパなどに履き替えることが一般的で、場合によっては土足のまま行動する室内区域もある、といった程度です。もっとも、基本的に室内ではスリッパやサンダルを履き続ける、といった意味では畳の上で本当の「裸足」での生活を常としていた日本人とは異なる文化と言えるでしょう。
さて、家の中でもっとも人々の足によって踏まれる頻度の高い「玄関部分」には、床材の中でも特に耐久性が高く、長持ちする素材が使われがちでした。特に、外から砂や汚れなどを持ち込む可能性が一番高いのもこの玄関部分で、半エクステリアのような扱いをされています。それゆえ、裸足にはヒンヤリする、という理由で裸足文化圏ではあまり人気のないタイル材なども、その耐水性、耐久性から欧米住宅の玄関部分に好まれて使われてきた部材の一つです。
床材カテゴリの中でも最強の耐久性を誇るタイル床ですが、硬い、冷たい、という弱点があるため、最近ではタイル床の長所を引き継いで石灰石を混ぜ込んだSPCフロアの使用が増加するようになりました。その中でも特に、昔ながらの石目タイル風デザインを模したスタイルが人気を博しています。
重要視されるポイント
- 多くの人々が行き来するため、耐久性
- 多くの人目に付きやすいため、万人受けする洗練されたデザイン
適した床材
- タイル(セラミック、大理石等)
- SPCフロア
リビングルーム
欧米文化におけるリビングルームは、客人をもてなす場として、家族の団らんの場として、あるいは恋人や気の置けない友人とのんびりとくつろぐ場として、TPOに応じた多種多様な使われ方をします。
欧風リビングルームのインテリアデザイン作りの際に念頭に置かなくてはいけないのは、特定のフォーマットや流行の真似をするのではなく、リビングとは自分の「個性」や「生活スタイル」の発現の場であるということを理解する点です。映画が好きでもないのに流行りだからといってホームシアターを誂えたり、高級感溢れるといって所かまわず大理石を敷き詰めたりと、自身の生活スタイルと乖離してしまうと、リビングは心地よい空間として機能しづらいでしょう。
客人にゆっくりとくつろいでもらえる空間である一方、能弁に語ることなく「この家の家主はこういった趣味の持ち主である」と暗に訴えらるような空間作りが、リビングという家の顔にはふさわしいと言われています。
この意味で、リビングに敷く床材選びはある種時計選びの趣味と似ているかも知れません。多機能性を重視するか、耐水性を重視するか、はたまたデザイン性か、少し高くなってもすべてを兼ね備えた床材か、等々。見る人が見れば床材やインテリアの趣味から人となりが理解できるため、社交の場として重要なリビングの床には、家の中でも特に慎重な床材選びが必要になってくることでしょう。
重要視されるポイント
- 多くの人々が行き来するため、耐久性
- 異なる様々な用途に対応できるよう、多機能性
- 家の顔として自身の感性を表現できるようなデザイン性
適した床材
- ラミネートフローリング
- 木質フローリング
- SPCフロア
キッチン
従来の通りキッチン空間として独立したものもあれば、リビングダイニングと言われる、要するにキッチン空間と食卓を囲む空間が同一スペース内に存在する作りの間取りも欧米では多く見られます。そのため、一概に「キッチンに適した床材」というテーマを一般論で語ることは難しく、ケースバイケースと言えるでしょう。
一方で「重要なのはデザインと耐水性!キッチンに適した床材とは?」の記事でキッチンの床材選びに関して紹介した通り、基本的に料理や洗い物を扱う空間として機能する以上、耐水性や耐汚性、清潔感を醸すデザイン性などはやはり気を付けておきたいところです。そう言った意味で、欧米の旧来のキッチン床材は玄関口と同様に耐水性抜群の「タイル」が多く、時代の流れとともに「SPCフロア」などタイル床の長所を引き継いだフローリング風床材の需要が伸びてくるようになりました。
キッチン床材の色合いに関しては特に好みの分かれるところで、汚れを目立ちにくくする黒や灰色系のものもあれば、清潔感を醸す白系、食欲増進に効果的な木質の暖色系など、まさに多種多様と言えるでしょう。キッチンダイニング型の欧風の間取りの場合、客人をもてなし、かつ食卓にも適したオールラウンダーのオーク柄のデザインなどが人気です。
重要視されるポイント
- 水回りのため耐水性
- 冷蔵庫やテーブルなど重いものに対応できるための凹みへの耐性
- コンセプトにあったカラー(清潔感、暖色、等)
適した床材
- タイル系床材
- SPCフロア
子供部屋
欧米でそのコンセプトが誕生した「子供部屋」ですが、キッチン同様、子供の年齢や嗜好などによって異なるため、これといった特定の床材のオススメは難しいところです。欧米の一般論でいうなれば、庭や公園で遊んで汚れたまま家に帰ってきたり、鉛筆やクレヨンでそこらに落書きをしたり、やんちゃな子供がモノを投げつけたりと、家の中でも特に突発的な汚れや傷の生じることの多い空間であるため、耐久性と子供への安全性(有害な化学物質を含まない、等)を兼ね備えた床材が良いでしょう。
耐久性や耐汚性という面でいえば、上述の通りタイルやSPCフロアがやはりお勧めの筆頭候補にあがります(もっとも、タイルですと転倒の際にケガをしやすく、子供部屋に施工する例はほとんど見られませんが)。有害物質などの安全面でいうなれば、床材の種類というより、そのメーカーの販売している認証や施工方法などをチェックするのが良いでしょう(例えば、健康的であると喧伝されるフローリングの中にも防腐剤やホルムアルデヒド由来の接着剤を含むこともあり、一概に床材種類だけを見て判断することはできません)。
「知育教育に重要な子供部屋の役割とインテリア選びのコツについて」の記事でも紹介した通り、子供部屋が他の部屋と異なるのは「子供の成長は早い」という点で、要するに現在の子供の大きさや数に合わせてインテリアを誂えても、3年後には嗜好も体力も様変わりしてしまっていることが多々あるわけです。そう言った意味では、後から模様替えのしやすいSPCフロアなどが適していると言えるでしょう。
重要視されるポイント
- 子供の遊び、生活に耐えうる耐久性、耐水性
- 健康面などでの安全性
- 子供の成長に合わせた柔軟性
- 子供の創造力を助成する美しいデザイン性
適した床材
- 木質フローリング
- ラミネートフローリング
- SPCフロア
寝室
書斎と寝室を兼ねている人もいれば、純粋に「睡眠のため」だけの部屋を擁している家庭もあるでしょう。ヨーロッパではもともと貴族階級の邸宅にのみ取り付けられていた寝室は、都市部への人口の流入とともに公私の仕切りが明確になると、次第に一般家庭にも寝室が浸透し始めるようになります。
ドラマや映画などで見かける王侯貴族の天蓋付きベッドを見ればイメージがつくかと思いますが、睡眠中は生物の最も無防備な状況であり、それがゆえにカーテンで仕切られ唯一の「プライベート」が約束された空間として扱われていました。
寝室に求められる機能とは、プライベート・寝る、という目的に特化した家主に「安らぎ」を与えることです。その点、素足で歩いて冷たさを感じるタイル床などはあまり適しません。肉体的な心地よさは勿論、視覚的にも温かみを与えやすい暖色系の床材がやはり好まれがちです。欧風住宅などでは寝室の床にオーク床やオーク柄の床などが敷かれるのも、これが理由でしょう。
重要視されるポイント
- 肉体的な温かみ
- 視覚的な温かみ
適した床材
- 木質フローリング
- ラミネートフローリング
- SPCフロア
- カーペット
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