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2022.1.18
海外で人気のラミネートフロアが日本で流行らない致命的な欠点とは?
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
世界で約10億㎡の売上を誇るラミネートフロアは、日本を除く欧米先進国で過去数十年間強い市場プレゼンスを誇っていました。一方で、日本ではその導入後売り上げ実績は横ばい状態で、他の床材製品のような爆発的な人気を博すことはありませんでした。
なぜ日本の建材市場は、世界各国で製造・販売されているラミネートフロアの流行に乗り遅れたのでしょうか?今後日本でラミネートフロアが流行することはあるのでしょうか?
今回は、ラミネートフロアが持つ致命的な欠点をベースに、欧米先進国諸国で徐々にそのプレゼンスが落ちている原因と、日本で根付かなかった理由等について解説していきたいと思います。
目次
ラミネートフロア(Laminate Flooring)とは
1970年代に北欧で開発されたラミネートフロアですが、2020年時点の全世界での販売実績は9億7500万㎡と言われており、タイル、カーペット、塩ビ床、木質床と並び、世界の主要床材の一つとして大きなプレゼンスを持ちます。
製品は50年近く前に北欧で開発されたもので、それまで主流だった木質床に比べ「表面の耐久性に優れ」「安く」「施工しやすい」ことなどを売り文句に全世界で売り上げ販売ボリュームが拡大しました。
製品構造としてはシンプルで、HDF(木のチップを高密度で固めたもの)の基盤の上に本物の木質フロアに見えるように印刷シートを噛ませ、その上に耐久性を上げるためのシートを接着する方式です。
価格帯を見ると一目瞭然ですが、木質はおろか、塩ビなどと比較しても安価なグレードを保っており、特に中国製のラミネートフロアは㎡辺り100~300円で製造できるため、世界の床材市場で絶大な価格競争力を誇ります。
各国における生産量の具体的な数値は定かではありませんが、元々ドイツや北欧などにあった生産拠点が、じわじわと中国や東南アジアに移っていったものと思われます。
EPLF(European Producers of Laminate Flooring)の公表している販売実績を見ると、2015年時点での主要販売国はドイツ、フランス、イギリスなど西欧諸国でしたが、SPCフロアの台頭や、生産拠点が中国に移ったことによるラミネートフロアに対する「安物イメージ」、また後述の通り施工上の欠点などから、先進国におけるプレゼンスは徐々に低下している現状です。
一方で、その安さを武器に、タイやベトナム、フィリピンなど発展途上国市場ではいまだに大きな市場シェアを誇り、大手ラミネートフロアのメーカーはターゲットを先進国市場から発展国市場に変更しつつあります。
ラミネートフロアの欠点と日本の現状
さて、このように世界各国で大きな影響力を持っているラミネートフロアですが、日本での売り上げはどのようなものなのでしょうか。日本では輸入物が出回ってはいるものの、年間の販売量は日本における全床材需要のうち0.01%を切っているのではないかと予想されます。
日本で主流の床材と言えば、複合フローリング、塩ビ床フロア、カーペット、次いで畳や無垢フローリングなどですが、10~15年ほど前に日本に顔を見せたラミネートフロアは、そのあと微増微減を繰り返し、鳴かず飛ばずの状況にとどまっています。
なぜ、欧米先進国諸国と日本とでこのラミネートフロアの流行度合いはここまで違うのでしょうか?
以下に、日本でラミネートフロアが根付かない、そして今後も根付くのが難しいであろう根本的な理由を紹介していきたいと思います。
Fフォースター(F☆☆☆☆)規制
ラミネートフロアの主要生産拠点およびその販売国は欧米、中国や東南アジアですが、日本を除くほぼすべての国で、製品の規格は統一されています。すなわち、国ごとにいちいち生産ラインを変えたり、製品を作り変える必要がないということです。
対して、海外メーカーが日本で販売するとなると、日本固有の認証規定である「Fフォースター」をパスしなくてはいけません。Fフォースターとは、シックハウス症候群を防止するためのホルムアルデヒドの発散量上限を定めた認証のことで、日本の木質建材市場ではFフォースター認証を持たない製品は施工上の規制が多く、製品としての価値を持ちません。
上述の通り、ラミネートフロアの基盤は木材をチップ化して接着剤で固めたHDF(High Density Fibreboard)なので、ホルムアルデヒドの発散の原因である接着剤を過量に含み、他国で流通しているラミネートフロアではFフォースター認証をとれない状況なのです。
一部メーカーなどは、工場ラインなどを変更することで日本のFフォースター認証を取れるような工夫をしていますが、そうすると本国で販売するよりもはるかに製造コストが高くなってしまい、ラミネートの「安価である」という最大の強みが失われてしまいます。
高温多湿の気候条件
ラミネートフロアの基盤は木質由来のHDFです。そのため、木材の宿命ともいえる「湿度による膨張と、乾燥による収縮」という性質を避けられません。この性質は、ラミネートフロアが日本で流行せず、またはシンガポールや北欧諸国がいち早くラミネートフロアを見限った原因ともなりました。
夏場に多湿で膨張するラミネートフロアは、壁と床材の間にクリアランスを設けておかないと突き上げの原因となります。そのクリアランスの幅も、10~20㎜、気候条件によって異なる、となんともアバウトなもので、欧米式のラミネートフロアに慣れない現場では施工不良が多発し、結果として日本でラミネートフロアに対して悪いイメージが根付いてしまいました。
大気中の湿度だけでなく、新築であれば床下からの湿度にも気を付けなくてはいけませんし、水を扱うキッチンや脱衣所、あるいはカフェやレストランなどのなどへの施工も注意しなくてはいけません。このような後からどんどん発覚する使い勝手の悪さで、次第にラミネートフロアへの熱が冷めていったわけです。
硬さ
ラミネートフロアは、日本の建材文化にとって「帯に短し襷に長し」、というどっちつかずの中途半端な製品でした。価格的には魅力的なものの、湿度条件、施工条件などを考慮すると、商業物件にも新築物件にもなんとなく使いづらかったのです。
新築物件での使い勝手の悪さには、その床材の硬さが挙げられました。日本の住宅の主流床材である複合フローリングは、基本的に基盤は合板のため、踏み心地はソフトで素足でも温かみを感じます。対して、強度を保つためにチップを極限まで凝縮したHDFは、「素足で踏むと硬い」という物言いがつき、日本人には馴染まなかったのです。
ラミネートフロアと今後
ラミネートフロアの先進国での流行は、上述の通り峠を越えた感じを醸しています。プロダクト・ライフ・サイクルに基づけば、ラミネートフロアは生産拠点が欧米先進国から発展途上国へと移ったことですでにメーカーは製品としての旨味を失い、製品としての成熟期を超えやがて衰退期へ差し掛る動きを見せています。
日本での年間販売量は、ラミネートフロアが日本に導入された当初期から比較して、劇的に向上した兆しを見せません。すでに世界の流行が、接着剤を多用するHDF市場から、耐水性に優れたSPCや、原点回帰で木の温かみを感じる木質フローリング、あるいは次世代の床材などに移行しつつある以上、このまま日本でラミネートフロアが日本で流行ることなく、フェードアウトしていく可能性は高いように思えます。
一方で、ラミネートフロアが日本で提起した問題点は、今後輸入建材が日本に導入されていく上での重要な判断材料となりました。気候の問題、認証の問題、文化風習の違いなど、海外の良い製品を導入するとしても、現地化しなくては成功は望めないという好例です。
ドイツからの輸入床材を扱う当社も、こうした文化や気候条件の違いには配慮をし、日本の特徴に応じた施工方法を提案しています。ドイツ製SPCフロア、クンストヴェルクコレクションに関するご相談は、こちらからお問い合わせください。
参考文献:EMR(Expert Market Research)
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