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2022.10.3
低い暮らし(ロースタイル)に向いている部屋の特徴とメリット・デメリット
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
「低く暮らす」ことを前提にしたいわゆるロースタイルインテリアは、昔から床に座る生活をしていた日本人に馴染みの深いスタイルです。日本人の生活・居住スタイルにマッチしているだけでなく、部屋を広く見せるという観点からもメリットが大きいとして広く受け入れられています。
北欧スタイルと和のテイストをミックスしたジャパンディスタイルの家具とも相性が良く、日本の住居でも取り入れやすいロースタイルインテリア。今回は、このスタイルに向いている部屋とメリット・デメリット、スタイリングの注意点などを解説します。
低い暮らしの特徴と、一般的な高さの暮らしとの違い
まず、低い暮らし(ロースタイル)と高い(一般的な高さの)暮らしは何が違うのかを考えてみましょう。大まかに定義すると、低い暮らしは行動範囲が床に近く、逆に高い暮らしは床から離れている生活スタイルです。
両者の違いを生むのは、部屋に置かれている家具の高さ。低い暮らしでは、チェスト、椅子やソファの背もたれ、テレビ台の上のテレビ、ヘッドボードを含めたベッドなど家具の最も高い部分を60cm以下に抑えることが推奨されます。家具高に伴って座面の位置も下がるため、座った時の目線が低くなることが特徴です。
リビングルームに配置する家具で例をあげると以下が高さの目安とされており、ロースタイル向けの家具は一般的な高さの家具よりも5cm程度低く作られていることが分かります。家具高を全体的に抑えて何もない空間を多く作ることで、感覚的に広く感じさせる狙いがあります。
【ロースタイル】
- ソファ:座面高35cm程度
- リビングテーブル:30〜40cm程度(こたつ卓と同等の高さ)
【一般的な高さ】
- ソファ:座面40cm程度
- リビングテーブル:35〜45cm程度
家具の中でも高さが目立つダイニングチェアとダイニングテーブルは、姿勢を保ちやすく食事しやすい高さ(チェアの座面:約40〜43cm、テーブル:約70〜75cm)を考慮すると家具高そのものを変えることは難しいものの、背もたれに高さのない椅子を選んだり、背もたれのないベンチタイプを採用することで見た目の高さを抑えることができます。
低く暮らすためのロースタイルインテリア
家具を床に近い位置に集約し、天井までの余白を多く取ることで限られた空間に広がりを感じさせるのがロースタイルインテリアのテクニックです。一般的に床に近づくほど物量が増えるため、①なるべく物を減らし、②シンプルな家具を選ぶ、この2点を徹底し、目に入る情報量を少なくすることがコーディネートの秘訣となります。
一般的な日本人の目線の高さは床座で約80cm、ソファ着座で約100〜120cm、立位で約140〜160cmと言われていますので、家具高が60cm以下に抑えられていれば床に座った場合でも家具によって視線が妨げられることなく、圧迫感を減らすことができます。
向いている部屋とメリット
- 狭い部屋、ワンルーム
- 天井が低い部屋
- 掃き出し窓の部屋
- 小さい子供がいる家庭、子供部屋
物がない空間を広く取ることで物理的面積以上の広さを感じさせることができるロースタイルインテリアは、狭い部屋やワンルーム、上からの圧迫感が強い低い天井の部屋に採用すると効果を実感することができます。視線を遮らないことで広く見せるという点では窓の存在も重要で、座面の低いソファや床に座っても外の景色が見える掃き出し窓の部屋が向いています。腰窓のみの部屋だと、座った時の視界が限定されるため開放感が失われてしまう点に注意してください。
また、家具の重心が低く、地震で倒れる心配が少ないので防災面でも優れています。ソファの座面は子供でも座ったり登ったりしやすい高さなので、乳幼児がいるご家庭でも安心して採用できます。
デメリット
(1)寒さを感じやすい
床に近い場所に座るぶん、地面からの冷気や下に溜まる冷たい空気を感じやすくなります。夏は涼しく過ごせる反面、冬は足元から冷えやすいのがデメリットです。床暖房が設置できればベストですが、難しい場合は熱伝導率の低い床材を選んだり、ラグを敷くなどの対策が必要になります。
(2)家具に埃が付きやすい
家具が床近くに置かれているぶん、歩くたびに舞い上がった埃が家具上部にたまりやすくなります。また、家具上部が常に目に入るため目立つというマイナス点もあり、清潔感を保つにはこまめな掃除が必要です。埃が目立つ濃い色の家具を選ばない、拭き取りやすい素材を選ぶなど、家事の手間を考慮して家具選びをしましょう。
(3)足腰に負担がかかる
座面が低いと立ったり座ったりの動作で腰や膝への負担がかかるので、高齢者の住まいのインテリアとしては不向きです。立ち上がりにくさや座りにくさは、アームのあるソファを選ぶことで多少軽減することができます。
(4)収納スペースが限られる
ベッド下収納など、家具下に収納スペースを確保することが難しくなります。また、高さを抑えたコンパクトな家具は家具そのものの収納力も低いので、全体的に物を減らす工夫が求められます。
家具や内装材選びの注意点
ロースタイルインテリアの目的は空間を広く見せることですから、圧迫感のある色(進出色)づかいは避けるのが鉄則です。壁や天井には、膨張の効果がある高明度な白やライトグレー、ライトイエローなどを使うことで広がりや開放感が生まれます。また、後退色と呼ばれるブルーなどの寒色系にも空間に奥行きを感じさせる効果があり、ロースタイルインテリアに向いた色であると言えます。
床の色は家具とのマッチングで選んで問題ありませんが、広さのない部屋で広幅や節の強く出たフローリングを使うと、単調さや圧迫感を感じさせてしまうマイナスの視覚効果があるので注意が必要です。無垢や複合フローリングの場合は細幅(35〜57mm程度)から一般的な幅(70〜90mm程度)で、木目の個性の強くない材を選びましょう。デメリットの項で挙げた「埃が目立つ」という点を考慮して家具を明るめで揃えた場合は、家具よりも明度を落とした床色を選ぶと全体のバランスが取りやすくなります。
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