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2022.11.9
お洒落なカフェに適した床材とは?
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
かつては食後のコーヒーを楽しむ、心地よい空間で仕事やミーティングをおこなう、といった用途でのカフェ・喫茶店の利用がメジャーでしたが、競合業種の逓増と人口動態の変化などにより、カフェ業も業態変化を迫られつつあります。
今回の記事では、デザインだけではなくカフェ業経営としての視点から、次世代を生き抜くカフェ業界に最も適した床材・床板素材の選び方についての解説を行っていきたいと思います。
喫茶店、飲食店、アパレル店舗、小売店・ショップにおける床材の選び方も解説しているので、必要な形態にあわせてお読みください。
カフェの床材選びが重要な理由
数ある店舗系業種の中でも、カフェに施工する床材や床板の素材選びは難易度が高いと言えるでしょう。自宅の床への施工と異なり、デザインの趣味だけでなく、什器備品との調和とデザイン性、衛生面での問題、多くの人々が行きかうための耐久性、予算や工期、などをバランスよく満たす必要があります。
特に人目を惹きつけるため、デザイン部分に力を入れたいと思った場合、自身の感性だけでなくデザイナーさんなどの手を借りて設計することになりますが、什器やデザイン料を含めていくと、思い描いた予算通りに進まず、場合によっては床材に充てる予算を削ることに、といったケースも多々あることでしょう。もっとも、予算を削る際にやり玉に挙げられやすい床材部分こそ、カフェインテリアにおいて最もデザインインパクトが強く、集客に大きな影響を与える要因の一つとも言え、注意が必要です。
カフェの床材に必要となる要素としては以下のものが挙げられ、基本的にそれぞれ最低限のパフォーマンスを発揮できるタイプの床材を選択するべきであると言われます。
- デザイン性
- 耐水性
- 抗菌性
- 耐久性
以下に、一つ一つの項目の詳細を見ていきましょう。
デザイン性
他業種と比べ、昨今のカフェ業におけるデザイン性の持つ集客への影響力は軽視できません。2021年の調査によるとカフェを選ぶ際の顧客から見た重視点は価格でも飲食の質でもなく、「雰囲気の良さ」であることが明らかにされています。インターネットカフェやオープンオフィス、コンビニのコーヒーショップといった競合との、今までのカフェの用途であった気軽なミーティング時やコーヒーの消費といった顧客層の奪い合いが激化する中、カフェの業態も変化を強いられつつあると言えるでしょう。
勿論、ターゲットとする年齢層や職業によっても異なりますが、こうした他競合との差別化のため、消費者の多くが「安心」「読書」「友人とのお喋りの場」といった憩いの場としての価値をカフェに見出しつつあります。特に、若年層のカフェ利用の理由として「友達や恋人とのお喋り」といった交際スポットとしての利用価値が多くを占めているのは、面白い結果と言えるのではないでしょうか。
このように、「安くて美味しいコーヒーを提供できるカフェ」ではなく、「安心できる、憩いの場としてのカフェ」としての利用層が増えつつある中では、デザインや空間づくりの持つ意味合いも自ずと高まります。
床材それ単体のデザインというよりも、周囲の什器とのバランスでデザイン性は定まるものですが、やはり床材そのものを選ぶに際しても、他競合との差別化になり、作り手の拘りが透けて見えるような意匠性の強いデザイン選びがされると良いでしょう。
耐水性
飲食業にとって、保健所の許可が下りるかどうかは正にビジネス問題です。保健所の目がダイレクトに厳しい厨房床と比較し、客席床の素材選びの重要性はやや劣ると言えますが、それでも「店の清潔性」のためには客席の掃除も重要項目の一つです。
保健所のチェック項目に関しては地方によって差はありますが、例えば、大阪府の定める衛生管理の基準として、以下のようなチェック項目が挙げられています。
店全体を清潔に保つため、やはり定期的に掃除しやすい素材を選んでおくことは重要です。日々の掃除以外にも、不意にグラスが割れたり、水やコーヒーがこぼれるなど、他業種と比較しカフェ業の床には特に耐水性が求められると言えます。
耐久性
規模に応じて異なりますが、喫茶店業1店の1日あたりの来客数は、個人オーナーの店で30~40人前後、法人の形式をとっていると100~200人程度と言われています(参考資料:厚生労働省「喫茶店営業の実態と経営改善の方策」)。不特定多数の土足での使用に加え、椅子をひいたり、場合によっては荷台で仕入れをおこなうなど、何かと手荒い使用に耐えることのあるカフェの床材は、やはりそれなりの強度を持ってしかるべきでしょう。
具体的に何人、といったクライテリアはありませんが、ヨーロッパの基準で使用頻度に応じた耐久強度の例を挙げると、不特定多数の人間が出入りをする商業用途の床材にはWC31以上の使用が推奨されており、駅前のカフェのように極端にトラフィックの高い店舗への施工にはWC33が適しています(クンストヴェルクプラスはWC33に該当します)。
適した床材
さて、こうした「カフェに理想とされる床材の特性」を一通り理解したところで、続いてこれら条件を満たす床材を紹介していきます。最も、予算や工期であったり、下床の環境など様々な条件によって「理想的な床材」は変化することに留意してください。
※店舗の種類別に適した床材を解説している記事はこちら
木質フローリング
カフェの持つインテリア性、リラックス性を最大限に発揮できる床材の一つが木質フローリングと言えるでしょう。技術が発展し、木質そっくりの床材デザインが製造可能になった今日でも、本物の木質の持つ質感や木目の美しさは達成不可能な自然の芸術としての地位を守りつつあります。 一方で、耐久性、耐水性の部分に関しては弱点を抱えており、設計や構想の時点では候補になることが多くとも、実際のメンテナンスなどを考慮すると泣く泣く諦める、といったケースが少なくありません。
長尺シート
日本の店舗用床で最大級の市場規模を誇り、豊富なデザインバリエーションと安価な価格帯を強みにする長尺シートは、水洗いにも耐えられることからカフェ市場への施工にも安定した人気を誇ります。一方で、汎用品の人気が高いため、どうしても「どこかで見たデザイン」という雰囲気が拭えず、カフェの雰囲気の差別化がしづらいといった欠点は拭えません。
セラミックタイル
一見すると固く冷たい印象を与えてしまいがちのセラミックタイルですが、最近では木目調や暖色のセラミックタイルも登場してきており、デザインのバリエーションが増えています。100%耐水で、掃除にも強く土足でも使用であることから飲食店舗では長年人気を博す選択肢の一つと言えるでしょう。
SPCフロア
2010年代に欧米先進国で人気を博し、2010年代後半から日本で広まったSPCフロアは、塩ビと石灰石を混ぜ合わせた強みから、上述の長尺シートやセラミックタイル同様耐水性に優れた特性を持ち、メンテナンスの点ではトップクラスの利便性を誇ります。土足での使用が基本であるドイツ産であるパラドーのSPCフロアは、WC31、WC33といった製品レンジを持ち、高いトラフィックを持つカフェ店舗への施工も可能です。
加えて、ドイツの国樹として欧米文化と親和性の高いオーク柄をメインに、全てドイツ人デザイナーの手で興されたパラドー社のSPCフロアのデザインは、世界中の有名ホテルや高級レストランで使用されるなど、欧米のデザイナー・建築家界を中心に人気を博しています。日本で中々お目にかかることのない本場ドイツの床材デザインは、日本で一つだけのカフェインテリアを手掛けるのに最適な最後のピースとなりえるのではないでしょうか?
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