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2022.6.6
ドイツで人気の最新インテリアトレンド ベスト5選
監修
インテリアコーディネーター/窓装飾プランナー亀田彩夏
海外の有名床材ブランドなどを取り扱うインテリア総合商社勤務。インテリアコーディネーター、窓装飾プランナーの資格を保有。
隣の芝は青く見える、とはどこの国でも似たような諺表現があるほどで(ドイツ語では「Nachbars Kirschen sind süßer」、直訳すると「隣人のサクランボは甘い」)、人間にとって手の届かないもの、遠いものは憧憬の対象になりがちです。
ドイツでも、大衆のインテリアトレンドへの理解が深まりつつありますが、ドイツ人の好むインテリアはなにもドイツ風の「バウハウス」「インダストリアルデザイン」だけではありません。それ以上に、お隣の「北欧スタイル」や「日本スタイル」が人気を博しているのです。
北欧スタイル
20世紀前半から、すでに北欧5カ国を起点とする北欧系インテリアは、世界のインテリア関係者に注目を集めつつあり、戦後にはIKEAを代表する「北欧家具メーカー」の成功とともに知名度は飛躍することとなりました。
マーケティング戦略の成功も寄与しつつ、自然との調和というスカンジナビア人の暮らし・哲学自体も関心の的となり、生活スタイルそのものを北欧人に学ぼう、という動きが多くみられるのが、その他表面的なインテリア・デザインとの違いです。
見渡す限りの豊かな自然、開放的な窓、軽快な色使い、自然素材・・・こうしたキーワードによって表現される北欧風の生活は、お隣ドイツからしても魅力的にうつるもので、広大な自然こそ再現できませんが、室内環境や暮らし方に関しては北欧風をお手本にする家庭が少なくありません(※区分けにもよるものの、地政学的にドイツは中欧に分類され、北欧は主にスカンジナビア3国のイメージとなる)。
北欧インテリアの特徴
- 自然との調和を重要視したインテリアづくり
- 流行り廃りの少ない、タイムレスなデザイン
- シンプル・機能美的
- ミニマリズム寄りの哲学
- 光を取り込み大きく見せる、全体的に大きなデザイン
(引用元「北欧・スカンジナビア風インテリアと床材の合わせ方」)
後述するジャパンディ・スタイルとも関わってきますが、北欧・スカンジナビア系インテリアは自然との調和を大切にする日本人の生活スタイルと親和性があり、ドイツ人の中には「北欧チェアの上で日本のお茶を飲んで、優雅な昼下がりを」といったような組み合わせを行う人もいます。
日本風インテリア(ジャパンディ・ワビサビスタイル)
2020年頃から、メディアや雑誌記事、インスタグラムやフェイスブックのようなSNSにも頻繁に「ジャパンディ」という言葉が登場するようになりました。BBCの記事「The rise of ‘Japandi’ style」の言葉を借りると、ジャパンディは以下のように説明されます。
ジャパンディという言葉がはやるより前から、日本風の生活スタイル、哲学やインテリアへの姿勢というものは欧米でも一部の層に高く評価されていました。「ワビサビ」と言葉で知られる「もののあはれ」の概念は、フランスの詩人ポール・クローデルによって「無駄な物質にあふれた西欧風の文化とのコントラスト」という形で端的にあらわされています。
575の俳句、水墨画、利休の茶室、枯山水、こうした精神の白紙部分を活用する日本の伝統は、インテリアの分野にも脈々と受け継がれており、繊細にして優雅、住むものや訪れるものに過剰の視覚的情報を与えない、シンプル、素朴、という言葉で欧米知識人の人気を博しています。ただし、建材や気候の制限から、全ての日本的要素をヨーロッパに持ち込む、というわけにはいかず、例えば以下の写真のように部分的に日本的要素を織り交ぜる、という手法が使われます。
パラドー社も、日本との繋がりは深く、家具の産地大川で修業を積んだ技術部ドイツ人社員が在籍しており、その縁で日本文化をモチーフにした床材の製作もおこなっています。
バイオフィリック・デザイン
都市部への人口増加と自然と触れ合う機会の減少、というのは一極集中の進む日本だけでなく、ドイツやヨーロッパでも同様の様相を呈しています。ドイツの心理学者、エーリッヒ・フロムが起源とされる「バイオフィリア」はLiebe zum Lebendige(生きとし生けるものへの愛)という言葉で表現され、「人間は遺伝的に自然と触れ合いたい生き物である」という考えです。
21世紀に至るまで言葉を変え、哲学や心理学の分野で多く使用されていましたが、最近ではインテリア分野でも多用されるようになり、バイオフィリアの概念に基づいたインテリア設計(自然と触れ合う、自然を感じる機会の多いオフィスや都市計画)というものも多く見かけるようになりました。
観葉植物や視緑率(視界の中の緑の割合)、窓からの自然光、植物の香り、といったオフィスや自宅にいながらさながら「森林浴」を楽しめるような環境を人為的に作り出すことで、心身ともに健康になり、仕事の生産性や創造性の向上に寄与することができます(関連記事:バイオフィリック・デザインの歴史とインテリア分野での実践)。
マルチ・ファンクショナル・デザイン(多機能デザイン)
人口動態の変化、コロナ禍による長期的テレワーク、単身者の増加、などの傾向はドイツにあっても同様で、従来の住宅の在り方もここ数年の間に変化が見られます。要するに、各部屋や家屋が個別の機能を持っていた20世紀のトレンドから、一つの部屋や家屋にすべての機能を統合させてしまおう、という新しい動きです(マルチファンクショナリティの詳細に関しては「ワーク・ライフ・ブレンド時代の多機能インテリアとおススメの床材」の記事を参照)。
従来の「寝室で目を覚まし」「リビングで食事をし」「オフィスに行って仕事をする」という習慣が「一つの部屋で目を覚まし、食事をし、仕事をする」という生活スタイルに移行すると、それに伴って住空間にもより多機能性が求められるようになります。折りたためるテーブル、ソファに早変わりするベッド、収納になる階段、といった家具やインテリアが脚光を浴びるようになったのもひとえに、マルチ・ファンクショナリティの需要の増加に伴ってです。
マルチ・ファンクショナリティ的なインテリアのポイントは、それゆえ公私受けするデザインとオールマイティな機能性(耐水、耐汚性)ということで、床材ですとどんなインテリアとも合わせやすいタイル柄などが人気です。
カントリースタイル
2019年に端を発したコロナ・パンデミックは、日本をはじめ世界中の人々の生活習慣を一変させました。ドイツでもその事情は同じ事で、度重なるロックダウンとテレワーク需要で、人々の興味・関心はもっぱら「一日のうち長い時間を費やす家での暮らしをいかに快適にするか」に向けられるようになりました。
自然素材、自然との調和をうたい文句にする点では「バイオフィリック・デザイン」と似ていますが、カントリー・スタイルとはその人にとってどこか懐かしい、リラックスできる「田舎(カントリー)」の雰囲気をインテリアを用いて再現することです。
そのため、インテリアに用いる基本色は必ずしも緑である必要はなく、藤、陶器、石といった自然素材を用いた「何気ない」「素朴な」インテリアコンセプトであることが重要です。
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